
創業者社長として20年、
50歳を前に「自分がいなくなっても
今以上のサービスを提供し続けられる
組織」を作ると決意
もし、一つでも当てはまることがあれば、この記事がお役に立てるかもしれません。
- 創業社長として第一線で頑張ってきたが、そろそろ「自分の次」を考え始めた。
- 社内の「次世代リーダー」が自走できる状態を作りたいが、方法がわからない。
- 事業に対する「社長の想い」が社員にまで届いているか不安だ。
「自分がいなくなったら、会社はどうなってしまうのだろう……」ゼロから起業し、自身の能力と才覚で頑張り続けて会社を大きく成長させてきた創業社長の方ほど、強く感じる不安です。
今回は、29歳で起業してから20年近く、50歳を前にして「自分のあと」のことを考え始めた株式会社ジャストインネクスト矢部仁さんにお話を聞きました。矢部さん自身も感じていたこの不安を乗り越え、創業社長の自分がいなくなっても「ちゃんと会社も社員も成長し続けられる」と確信できるようになった取り組みとは?

50歳を前にして考え始めた「自分のあと」のこと
「創業者である自分がいなくなったら、会社はどうなってしまうのだろう……」
出発点は、経営者の方なら誰しもが抱えているであろう、この不安でした。
現在、私は47歳。29歳で起業してから20年近くが経とうとしていました。年齢的にいつ病気になるかもしれませんし、明日事故に遭う可能性もゼロではありません。50歳を目の前にして「自分のあと」を考え始めたタイミングでした。
そうした時期に、エンカレッジ株式会社の理念浸透アドバイザーと出会い、「会社の将来」や、僕がいなくなっても続いていく「ジャストインネクストらしさ」について考えるようになりました。10年後、ジャストインネクストがどのような会社になっていてほしいか……。自分の中でイメージを膨らませ続ける日々が続きました。
IT業界は下請けが多いのですが、ジャストインネクストでは直接エンドユーザーと契約して、提案から導入まですべてを請け負っています。そのため、弊社のメンバーにはクライアントから直接「ありがとう!」という言葉をいただく機会がたくさんあります。直接契約は大変ですが、そのぶんモチベーション高く仕事ができるのです。
だから、この先時代がどう変化しても変わらず、お客様から「ありがとう!」をいただき続けてほしい。それによってさらにジャストインネクストが成長していてほしい。そして、大切な社員や仲間たちがみんな元気に生き残っていてほしい。「10年後のジャストインネクスト」に僕が求めるのはそんな姿でした。
「僕がいなくても今以上のサービスを提供し続けられる状態」を作るのに7〜8年かかる
それを実現するためには、社員や仲間たちみんなが日々の言動を大切にして成長を続けていく必要があります。また一人ひとりの言動のありかたを、無意識のレベルに落とし込んでいくことも不可欠です。
そのためにはどうすればいいのか?理念浸透アドバイザーの方と話し合う中でこの図を見せてもらう機会がありました。その瞬間「これだ」とピンときました。
経営者も社員も同じ方向を向いて、組織全体が信念と自信を持ちながら迷わず行動していける状態。これが理想です。でも、理念浸透アドバイザーの方からは「その状態を実現するのに7〜8年かかりますよ」と。8年後には私は55歳です。そう考えると、今から着手しないと時間が足りません。やるなら今だ、と腹を決めました。
社内の次世代リーダー5人に「会社の次の時代」を考えてもらう
理念浸透アドバイザーの方からは、「理念は社長だけで考えない方がいい」と言われたので、社内の次世代リーダー5人を選んでプロジェクトチームを立ち上げました。突然社長から「この会社の『次の時代』を考えてくれ」と言われて驚いたと思いますが、「やりたいです!」と即答してくれたのは嬉しかったですね。
ひと言で「会社の理念」といっても、分解していくとさまざまな要素から構成されています。たとえば、会社として目指したい未来像をあらわす「ビジョン」。そしてお客様に提供する価値をあらわす「カスタマーバリュー」や、仕事をする上で大切にしたい考え方をあらわす「スピリット」などです。
理念浸透アドバイザーの方によると、弊社くらいの組織規模(50人前後)で創業社長が率いている段階であれば、「ビジョン」は社長主導で考えてもよいが、現場に近い「カスタマーバリュー」や「スピリット」は、社内の次世代リーダーを巻き込んで策定した方がよいとのことでした。
未経験の重大タスクを前に、次世代リーダーたちが成長
ただ、理念策定のプロジェクトがスタートした時点では、メンバーはみんな暗い顔をしていました。何しろ「会社の次の時代を考える」なんてタスクは未経験で、全員不安だったのです。
でも、始動してひと月が経過した頃から、メンバーの言動が変化し始めました。その理由を探っていくと、自分たちで議論を重ねる過程で「会社事」が「自分事」に変わっていったからだそうです。自発的に検討会を開いたり、ある時はヒートアップして1日中議論を続ける日もあったりと、メンバーがどんどん前のめりになっていくのが側から見ていてもわかりました。
そのプロセスを通して私が痛感したのは「創業者である自分が長年社員に伝えてきたことは、まったく伝わっていなかったのだな」ということ。結局、5人の次世代リーダーたちが半年かけて策定してくれたカスタマーバリューとスピリットを、私は一言一句変更することなくそのまま受け取ることにしました。会社の未来を担うのは、現社長の私ではなく、他でもない彼らなのですから。
創業社長の想いが、自然と社員が考え出した理念に
こうして生まれたカスタマーバリューは「お客様にちょうどよい未来を。」
「ちょうどよい」というフレーズが、社名の「ジャストインネクスト」によく合っていると感じました。創業時、「いつでもお客様の隣にいて、一緒に未来を考えて、動きますよ」という思いを込めた社名だったので、とてもマッチしていて嬉しくなりました。
そして、次はスピリット(JINは、社名 Just in nextの略称)。
このスピリットを、完成が近づいた時点でお客様に見ていただいたのですが、「JINさんらしくてとてもいいね!」と、好評でした。カスタマーバリューもスピリットも、日々大事に思っていたことが社員たちの力で見事に言語化されていて感心しました。
「理念の実践度合いによって基本給を決めていく」と宣言
今年度から策定した理念を本格運用していく予定です。具体的には、社員の評価はすべてカスタマーバリューとスピリットを実践できているかを基準に決めていきます。
個人のスキルや事業貢献度も大切ですが、一番大切なのは「カスタマーバリューとスピリットを実践できているか」です。社員にも、カスタマーバリューとスピリットに基づいて基本給を決めると説明しました。
否定的な意見は誰からも出てこず、「いつも言っていることですね」という感じでスムーズに受け入れてもらえたのも嬉しかったです。ここから数年は理念浸透のフェーズに入りますが、引き続き理念浸透アドバイザーの方に伴走していただきながら、カスタマーバリューとスピリットをどう具体的な評価基準に落としていくかの設計も含め進めていきたいと思います。
「自分がいなくなっても会社は成長を続ける」と確信を持てた
理念を策定する前は、自分がいなくなった時のことを考えると不安でした。
でも、今はその不安が軽くなりました。理念を浸透させるまでにはまだ数年かかりますが、浸透が完成した時点なら仮に僕がいなくなっても、会社と社員が成長し続けてくれると確信しています。
「企業理念ラボ」には、
企業理念の言語化や浸透策の
事例が豊富にございます。
ご関心のある方は
お気軽にお問い合わせください。
株式会社ジャストインネクスト
矢部 仁さん
IT系の専門学校を卒業後に、プログラマーとして従事。システムエンジニアなどを経験後、29歳で株式会社ジャストインネクストを設立。以降現在に至るまで一貫してお客さまに寄り添ったITソリューションを提供している。
会社情報
- 社名
- 株式会社ジャストインネクスト
- 代表者
- 代表取締役 矢部 仁
- 本社所在地
- 東京都港区芝5-31-10 サンシャインビル 5F
- 従業員数
- 40名(パートナー含む、2022年4月時点)
- 創業
- 2004年3月5日
- 事業内容
- ITソリューション事業、WEBソリューション事業、データサイエンス事業