INTERVIEW

創業8年目30歳で上場、
激しい変化を乗りこなす「強い理念」とは

興味のあるトピックが一つでもあれば、この記事がお役に立てるかもしれません。

  • 大学卒業と同時に創業、そして8年目30歳でスピード上場
  • どの方向にも漕ぎ出せる「新しい社名」で再スタート
  • 「ミッションとバリュー」だけでは成長期の社内をまとめられないと痛感
  • 新オフィス引っ越しに合わせて、2か月でスピード策定
  • バリューには「採用の失敗例」を参考にする
  • 社員の表彰は「各バリューごと」に行うのが浸透のコツ
  • 「パーパス」があるから上場企業でもしなやかに挑戦できる

創業8年目に上場、社会課題を抱える人材、エネルギー、ファイナンスといった多様な領域において成約支援事業を展開し急成長を遂げているポート株式会社。創業者であり代表取締役社長CEOの春日博文さんは、学生時代から起業を経験し、社会課題を解決する様々なビジネスを同社にて精力的に推し進めています。

 

社員平均年齢が28歳と若く、かつ年間100名ほど新卒採用する同社にて、社員一人ひとりが強みを活かし、何を目指すのかを明確化できたという理念策定プロジェクトについて聞きました。(聞き手=「企業理念ラボ」代表・古谷繁明)

大学卒業と同時に創業、そして8年目30歳でスピード上場

大学卒業と同時に創業、そして8年目30歳でスピード上場

ーー御社は幅広く事業展開されていますが、創業からの沿革について教えてください。

 

弊社は、私が大学を卒業した2011年(平成23年)に、就職支援、いわゆる新卒採用の支援ビジネスを軸として創業しました。大学在学中、すでに3年ほど個人事業主として動いていたので、就職支援分野の可能性は十分に感じ取っていました。

 

労働人口が減少し、生産性も低迷していることが日本の社会課題だと捉えています。今後この動きがさらに加速化するのは間違いなく、日本企業の生産性を維持、向上させるために、人材採用支援と営業・販売促進支援という2つの側面から課題解決を図りたいと考え、金融やエネルギーなどさまざまな領域で事業展開してきました。

 

ーー8期目の2018年には早くも上場、そのスピード感に驚きました。

 

ありがとうございます。私がちょうど30歳の時ですね。創業から上場まで7年半かかったことになります。今はちょうど上場からまた7年近く経ったタイミングにあたります。

 

ーー創業のタイミングでミッションやパーパスを掲げていらしたのでしょうか?

 

いえ、特にはなかったですね。在学時の事業経験から、いろいろな領域に展開している状況というよりも、「これは誰よりも強い」という事業を創らないと存続できないと考えていました。特定領域でNo.1の事業を作ることにまずは注力しようと。

 

 

創業当時の2011年は、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアが日本に上陸したタイミングでした。これらをリクルーティングで活用できないものなのか。

 

学生の時、すでに就職活動の支援をしていたので、それをソーシャルメディアと掛け算してビジネスをスタートさせました。ソーシャルメディア×リクルーティングなので、創業時の社名は「ソーシャルリクルーティング」でした。

 

BtoBの新卒採用支援の次に進出したのがBtoCのインターネットメディア事業で、そこから新卒だけでなく、金融をはじめ様々な事業領域に展開を始めました。

 

そうこうしているうちに、事業やチームが多角化したことによって、「ソーシャルリクルーティング」という社名を変える必要性を感じました。その際に改めて会社の存在価値を考え直そうということで、我々のあるべき姿を示すミッション「世界中に、アタリマエとシアワセを。」を定めました。社名変更が2015年で同じタイミングでの策定。各事業領域ごとにビジョンを作るというワンミッション・マルチビジョン体制を取りました。

どの方向にも漕ぎ出せる「新しい社名」で再スタート

ーー現在の社名でもある「ポート」に寄せた当時の思いをお聞かせください。

 

人類の歴史を振り返ると、昔は港があったからヒト・モノ・カネ・情報が集まり、雇用が生まれ、そこで経済が発展していきました。そこに港を作ることで、その地が発達した。つまり、「ポート(港)」の存在により、それまでの社会においての「当たり前の景色」が変わっていったわけです。

 

そういった背景を踏まえて、我々が「ポート」になることで今の世の中に「新しい当たり前」を作っていきたい、「あらゆる領域のポートになっていく」ということを社名で示したいと考えました。

 

以前の社名は事業領域そのものであり、この社名を使うことであえて事業領域を制限していましたが、社名をポートにしたらこの先社名を変える必要もないと考え社名変更をしました。この2015年時点での社員数は80名くらいで、売上規模は6億円程度でした。

 

ーー2015年に社名変更と同時に定めたミッションとビジョンですが、2020年前後から「限界」を感じるようになったとのことで、「企業理念ラボ」にご相談をいただきました。その背景を教えてください。

 

一つは「時代の空気とのズレ」ですね。以前は、企業がミッション・ビジョン・バリューを策定したり、何らかのメッセージを社会に対して打ち出す際、少し表現方法を複雑にしていた傾向があったのではないかと思っています。

弊社の場合ですと、「当たり前」を「アタリマエ」とカタカナで表現していてましたし、その手法が世間にウケていた感触がありました。

 

ただ、そういった表現が通用しなくなってきたように感じたのが今から3年ほど前でした。ある種、耳ざわりが良い表現より、もっとその企業のユニークさをストレートに伝える言葉が使われるようになったと思います。

 

「世界中に、アタリマエとシアワセを。」というミッションに込めた想いや内容自体を変えようと思ったわけではないのですが、もっと直接的に「ポートという会社が掲げているのはこれだ」というのが瞬時にわかるようなもの、見聞した時にスタンスを想起できるものにしたいと感じるようになりました。

「ミッションとバリュー」だけでは成長期の社内をまとめられないと痛感

「ミッションとバリュー」だけでは成長期の社内をまとめられないと痛感

ーー他にどんな課題感を感じられたのでしょうか。

 

上場後の当時は社員が150人程度、売上が30億円くらいで、まさにこれから駆けあがっていくというタイミングでした。採用数も年々増やしていていたので、ミッションに関して、社員への説明力と浸透力が弱いと、採用の場面で明確に苦戦するようになっていました。つまり、ミッションを深く理解し、本当に共感してもらえる候補者に入社してもらえないのではないかという課題感ですね。

 

ミッション「世界中に、アタリマエとシアワセを。」は、「社会の課題をテクノロジーとリアルを活用して解決していく」ということを示しているのですが、言葉だけでは十分に伝えきれない。補足説明しなければ、伝えたいことが伝わらないので、その説明と浸透のコストが高かったのです。

 

また、弊社のありたい姿や存在価値を定義する「ミッション」とは別に、社会の中でどのような存在意義を発揮し、どのように貢献していくかを定義する「パーパス」を制定する必要性を感じるようになりました。結果的に弊社では、ミッションはパーパスに内包されるものであると考え、パーパスに統一することにしました。

 

バリューに関しては、2015年の社名変更の際に「ポートステートメント」として策定はしていました。ただ、この時は他社が作っているからうちも作らないとね…という危機感があり策定してしまったところがありました。当然、策定した経営陣にも「これを社内に浸透させなくてはならない」といった意識が希薄でしたから、策定して1、2年でほぼ使われなくなってしまいました。その状況を目の当たりにして、やはり、経営陣が意思を持って策定しないとダメなんだなと痛感しました。

 

このようなことをずっと考えていたタイミングで、知人から「企業理念ラボ」の理念浸透アドバイザーの方をご紹介いただき、パーパスとバリューの策定にご協力いただくことにしました。

新オフィス引っ越しに合わせて、2か月でスピード策定

ーー実際にどのくらいのスケジュールで進められたのでしょうか。

 

まずは自分自身で、2022年の年始から考え始め、2023年年始にオフィス移転が決まっていたので、2022年11月から12月の2ヶ月間に一気に企業理念ラボさんとオンラインミーティングを8回ほど、また非常に多くの頻度でチャットコミュニケーションを取らせてもらい、スピーディーに言語化を進めました。

 

また、そのミーティングの前までに出来るだけ作成の過程や考えも残しておこうと考えてドキュメントに落としていきました。それらに対して理念浸透アドバイザーの方がどんどん言語化、フィードバックしてくださいましたので、それをまたドキュメントに書き込んでいくというやり取りも繰り返して、磨き上げて行きました。そのなかで、経営陣とも議論を重ねていきました。

 

 

パーパスは、経営戦略の大前提となるものだと考えています。これは自分たち経営陣で決めなければ、経営戦略そのものを作れないと感じたので、私と副社長、執行役員陣を中心に策定しました。

 

ーー社員の皆さんも策定プロジェクトに参画されたのでしょうか。

 

はい、全社向けのスレッドで、「今、バリューという、全社共通の価値観を作っているので、策定に参加したい人は特別スレッドに招待します!」と呼びかけたところ数十名が手を挙げてくれました。パーパス策定でも、最後の最後まで、細かな言葉尻の調整を含めてメンバーが相当協力してくれましたね。

 

 

例えば、「社会的負債」という言葉であったり、この副文となるメッセージの一つ一つの言葉や順番、最後の一文にある「そう、」を入れるか入れないかなども、チームで喧々諤諤最後までこだわったところです。

 

バリューの策定過程では、有志メンバーたちとディスカッションを重ね、その結果を理念浸透アドバイザーとの毎回のミーティングに持ち込むことをしました。「5values」をどの順番で並べるかなども、相当社内で議論を繰り返しましたね。理念浸透アドバイザーの存在が、策定の過程でとてもいい壁打ち役になってくれたと思います。ただ任せきりにするのではなく、経営陣をはじめ、社内メンバーが責任を持って、ここに時間を相当に使い、やりきれたことで浸透活動にもしっかりと活きているのではないかと思っています。

 

PORT 5values

 

・アンインストール

・パートナー思考

・⾼い解像度

・ディテールコミット

・挑戦のアタリマエ化

 

パーパス同様、バリューも策定し直すからにはしっかり作り込みたいと考えていたので、2022年の1年間はメンバーの前で話したことをメモして、ひたすら手元に残していました。数にして30個くらいあったと思います。それを理念浸透アドバイザーにお見せして、必要な要素を抽出していきました。すでに自分たちが持っている「種」を引き出してもらうコーチング的な手法で作り上げていったわけです。

 

バリューには「採用の失敗例」を参考にする

ーー「5values」の並び順は丁寧に議論をしましたね。最終的にこの並びにした背景を改めて教えてください。

 

バリューの並び順は優先度というよりも、ポートの「らしさ」をベースに考えていきました。

 

今は採用基準にこの「5values」を導入していて、ざっくり説明すると、「アンインストール」は素直さ、「パートナー思考」は誠実さ、です。この最初の2つで「スタンス」を示しています。「高い解像度」と「ディテールコミット」は各自の「行動」を、そして最後の「挑戦のアタリマエ化」が社員全員で作るべき会社の「インフラ」を、それぞれ表しています。会社全体の挑戦の総量が、結果的に会社の成長を支えることになると考えて決めました。

 

ーーつまり、「マインドセット」と「行動規範」があって、それを踏まえた上で「組織全体の方向性」を示しているということですね。

 

その通りです。ちなみにバリューは「どういう人を採用したいか」という観点でも策定しましたが、一方でこれまで採用しても上手くいかなかったケース、つまり失敗例も反映させました。過去に社内で残念ながら活躍、定着しなかった人材の要素もチームで丁寧に洗い出し、言語化して盛り込んでいったわけです。そうすることで、採用の場面で活用しやすいですし、それらのメッセージに共感する人材の採用に繋がっていますのでミスマッチが減っています。

社員の表彰は「各バリューごと」に行うのが浸透のコツ

ーーパーパスとバリューを2023年年初に公開して1年半が経ちました。以前は浸透度に課題を感じられたとのことでしたが、今回はどのような浸透施策を取られましたか。

 

四半期の社員表彰型式をバリューに基づいた「5values MVP」に変えました。5つのバリューそれぞれに、例えば「アンインストール賞」といった表彰を設けると同時に、表彰者の選出方法を全社員からの推薦制にしました。

 

全社員が推薦という行為を通じて、各バリューの項目を定期的に確認できますし、どのような行動がバリューに則っているかを考える機会が四半期に一度めぐってくることになります。「表彰されたい」と願う社員は、自分は「5values」のうちのどのバリューで賞を取れるかと考えるようにもなりますし、日々の意識づけが細やかにできるようになったと感じています。

 

ーーバリューによって、社員が何を自分の強みかを考え、何を目指していくかを明確に描けるようになったわけですね。

 

おっしゃるとおりです。各人が特に重視したいバリューは月次の1on1で取り上げる項目にもなりえますし、もちろん、採用項目にも入れています。新卒採用で毎年100名ほど採用するということは、採用過程で5,000名くらい応募者を選考する必要があるということ。面談担当の社員は「5values」を頭の中にインストールした上で面談に臨み採用可否を判断する必要も出てきます。

 

ーーバリューに基づいて採用された方たちの活躍や感触はいかがでしょうか。

 

結果はさらに3〜5年経たないとわからないと思いますが、評判は悪くないですね。入社1年目の社員の成果が年々上がってますし、会社としても成長し続けている事実が、彼らの活躍を物語っています。ただ、評価制度には「5values」を取り入れられる余地がまだまだあると感じています。

「パーパス」があるから上場企業でもしなやかに挑戦できる

ーー最後に、新しいパーパスを掲げた御社の、次なる挑戦や展望について教えてください。

 

新しく掲げたパーパスで、「日本の社会問題に対し真正面に立ち向かうこと」と、ある意味、事業内容を制限しましたが、それ以外の制限は何も設けていません。

 

今我々がやっていることは労働人口減少社会に対するソリューションの提供です。具体的には、採用支援と販促支援の2つを柱としていますが、この今の事業モデルに囚われず、一つでも多くの社会的負債を次世代の可能性に変えるためにできることにチャレンジしていきたいですね。上場企業なので、当然ながら資本主義社会のなかで勝ち抜いていける会社にならないといけない。でも、それがすべてではないですよね。

 

我々は「ソーシャルコミットメント」と呼んでいるのですが、会社として一定の予算を確保して長期的な社会的負債の解消に繋がるプロジェクトにも取り組んでいます。いわゆるSDGsですね。

 

例えば、弊社が金沢でプロ卓球チームの経営支援をしている縁で、能登半島地震で被災した卓球クラブや学校に自治体を通して卓球台を10台寄贈しました。この地域に住む子どもたちにたくさん使ってもらいたいですね。また、重度の自閉症の方がアーティストとして活躍しているのですが、それらを全面的に支援させてもらっています。他にも、人口3,000名程の島根県の西ノ島町という場所にオフィスを構えて、自治体のDX支援にも取り組んでいます。

 

事業成長を実現することは上場企業として大前提としながら、社会の問題を一つでも多く解決していく活動を積極推進していきたいですし、社内外に示せる明確なパーパスがあるからこそ、実行、継続できるのだと感じています。

 

「企業理念ラボ」には、

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ポート株式会社 

春日 博文さん

1988年生まれ、埼玉県出身。大学在学中に新卒採用支援業やプロモーション支援を個人事業主として開始。2011年、大学卒業と同時に株式会社ソーシャルリクルーティング(現:ポート株式会社)を創業。

会社情報

社名
ポート株式会社
代表者
代表取締役社長CEO 春日 博文さん
本社所在地
東京都新宿区北新宿2-21-1 新宿フロントタワー5F
従業員数
650人(2024年6月末時点:連結)
創業
2011年4月 
事業内容
成約支援事業
会社サイト
https://www.theport.jp/
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