INTERVIEW

「リファーラル採用=タダ」と思っている
中小企業社長に知ってほしい採用の鉄則

これまで3万名超の転職希望者と接点を持ち、2000名超の転職に携わり、中小企業の採用支援も数多く手がけられてきた株式会社morich代表取締役の森本 千賀子(もりもと・ちかこ)さん。中小企業の経営者から頼られるヘッドハンターでもある森本さんに、採用激戦時代に社長がとるべき「打ち手」を聞きました。

(聞き手:企業理念ラボ代表・古谷繁明)

※この記事は、2023年11月28日に開催された企業理念ラボ主催のサロンイベント「中小企業の事業承継を成功に導く採用支援」のレポートです。一部公開ができない発言は割愛している旨、ご了承ください。

お時間のない方は下記から興味のあるトピックを選んで読んでいただくこともできます。

この記事の目次

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過去30年で一番の激戦ーー「お金をかけても採れない」が常態化

古谷

今日は「中小企業の採用支援」がテーマです。

森本

「人の問題」で困っていない会社ってないんですよね。経営者の皆さん、本当に悩んでいらっしゃる。私も「人材屋」としてこの業界を30年見てきましたけれども、ここまで採用環境が厳しいことは後にも先にもなかったのではと思います。私の師匠であり、リクルートの創業者である江副浩正さんがおっしゃっていたことですけれども、「経営者は、その会社の中で誰よりも組織のことを考えている」。現場の人事の方や営業のマネジャーの方は、目の前の困った課題について考えているものです。「人が辞めちゃって困った」とか、「新しいマーケットを開拓するための人材が必要だ」とか、そういう課題ですね。

 

それに対して経営者は「未来のこと」を常に考えなくてはいけない。未来において、成長しながら、会社が存続し続けるためには今、何をやらなくてはならないか? それに答えを出すのが経営者の仕事です。

 

どんなにうまくいっている会社でも、「今の組織で完璧だ」という状況はありえません。「現在の状態が完全無欠だから、森本さんみたいな人材屋さんは要らないよ」という経営者の方はいらっしゃらない(笑)。そういう意味では、「採用は永遠の課題」なのだと思います。

 

リーマンショックの時に、有効求人倍率が一番の底を記録しました。具体的には「0.4倍」という数字でした。そこからコロナパンデミックが起こるまで右肩上がりで、一時期はバブル期の数字を超えていました。このままいくと、「人の問題」がより顕在化していくなと思っていた時にコロナが到来。コロナにより有効求人倍率はいったん落ちて、「リーマンショックの再来か」と予感したのですが、2020年9月には底を打ってそこからまた右肩上がりの状態が続いています。

 

私の実感では、過去30年でこれ以上にない「激戦」になっていると感じます。とにかく人が採れない。ひと昔前は、お金をかければ人が集まったんです。採用の現場でよく言われる、いわゆる「母集団」を形成できた。でも、今は単に投資をするだけでは、人を集められません会社が「選ぶ」ではなく、会社が「選ばれる」時代になりました。そんな時代に、「どうやったら選ばれる会社になれるの?」という相談を日々受けているわけです。

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ある日突然「右腕」が辞めると言いだしたら

古谷

つまり、採用の「戦い方」が完全に変わってしまったんですね。

森本

そうです。ツールも含めていろいろな方法が出てきたことも影響して、「これさえやっておけば大丈夫!」という正解が見えなくなり、皆さん非常に迷われています。

 

例えば、いわゆる知名度ある求人媒体に出稿すれば人が採れるという時代では、もはやない。昔は、投資していれば、ある程度集客できていたのですが、今はもう無理ですね。

 

まず大前提として、人の問題がとても複雑になっています。何かしらの工夫をすれば採用はできるかもしれません。でも「入社」はあくまでスタートライン。そこからしっかり「定着」して「成果」を出してもらわないといけない。そうなると、どういう職場環境を作らなければいけないか、どういう仕組みやルールを作らなければいけないか、といった問題を含めて、人事が複雑になってきています。

 

最近では、リモートワークと出社の問題があります。今、実は日本の企業は、リモートワークから出社に一気により戻っていますが、実際に転職希望者から来る話で多いのは、「今勤めてる会社がフル出社に戻っちゃったので、リモートワーク可能な会社に転職したいです」というもの。なので、会社としては、フル出社ではなくリモートワークとうまく使い分けることが必要です。

 

そう言うと、「月水金が出社で火木がリモートワーク」とルールを決めて固定でやる企業が出てくるのですが、そうじゃないんです。重要なのは「柔軟である」ということ働く人が自分のペースに合わせて、出社とリモートワークを柔軟に組み合わせられることがポイントです。つまり、性善説に則って、今週は子どもインフルエンザになっちゃったからリモート、来週は繁忙期なので出社というふうに自由に対応できるということですね。

 

ちょっと具体の話になってしまいましたが、要は、人事が対応しなくてはいけない事象が複雑化していて、なおかつ、環境はものすごいスピードでどんどん変化していくので、経営者の皆さんは身近にHRについて相談できる人材を置いておくことがとても大事な時代になっていると思います。もちろん、社内にCHRO(最高人事担当者)のような人がいたら理想ですが、なかなかそういう人材は採用できないので、顧問や業務委託という形で、その道のプロを確保しておく。パートナーとしてHRのことをいつでも相談できる人を皆さんも、見つけておきましょう。

古谷

そうしないと、目まぐるしい変化についていけない、ということですね。

森本

まさに、です。相談相手は「ホットライン」なんです。例えば、経営者である皆さんにとってとっても大事な幹部の方、いわゆる「右腕」がある日突然「辞める」と言い出すことも十分にありうる。私のところにもいっぱいそういう相談が来ます。そういう時、「辞める側」は社長には絶対に言いません。言うのは、もうすべてが決まってから。だから、どんなに慌ててももう覆せない。ある日突然、皆さんの「右腕」がいなくなるって、考えただけでもゾッとすると思うのですが、現実にはよくあることです。

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「リファーラル採用=タダ」は間違いーー賢い活用方法

古谷

では、具体的にベンチャー・中小企業の経営者として、採用で打つべき手を教えてください。

森本

皆さん、「リファーラル採用」という言葉をご存知だと思います。いわゆる「コネ採用」ですね。私がまずおすすめするのは、これを皆さんにとっての最強のツールにしておくことです。例えば、100〜200人規模の会社だと、8割をリファーラルで採用している企業も結構あります。私たち人材紹介業の出番がない、という感じなのですが(笑)。これはやろうと思えば、どんな企業でもやれることなので、皆さんにもぜひやっていただきたい。

 

リファーラル採用がうまくいっている会社は、総じて社員のエンゲージメントがとても高いんです。つまり、社員満足度がめちゃくちゃ高い。だって、自分が今所属している会社のことを自分の知り合いに勧められるということですから。自分が「居心地がいい」とか、「すごくハッピーだ」とか、そういう気持ちがないと勧められませんよね。

 

要は、リファーラル採用がうまくいっているということは、社員エンゲージメントが高いことのエビデンスであるとも言えるんですね。それもあって、リファーラル採用が強い会社になって欲しいと経営者の皆さんには伝えています。

 

私の知り合いの会社さんは、具体的に何をやっているかというと、それぞれの部署に求人ニーズがあると、それを毎月社員を集めた説明会で伝えているそうです。それぞれの部長や担当役員が、今自分たちの部署がこういう状況でこういう人材を求めているという話を伝える。そうすると、普段あまり接点のない部署の人でも協力してくれる可能性が出てきます。営業の人でも、「経理でこういう人を探しているんだな」とわかれば、自分の知り合いの中から探してくれるかもしれないわけです。

意外に皆さん、同じ会社で働いていても隣の部署の求人を知りませんよね。知らなければ、探してもらえませんから。そこの意識を変えるためにも、求人情報を毎月従業員の間でアップデートすることは重要です。

古谷

すごくシンプルだけど、あまりやってなさそうですね。

森本

やっぱり人材紹介サービスを使うと採用コストがかなりかかります。それに対してリファーラル採用のコストは低い。でも、「タダ」ではない。そこが注意点です。

 

「リファーラル採用=タダ」と思っていらっしゃる方は結構いると思うのですが、紹介してくれた社員にはちゃんと「インセンティブ」の形で返しましょうとある大企業だと、一人紹介して採用されたら、紹介した社員に50万円支払うというところもありますが、その方法は少し生々しいので、例えば、評価に加算するという方法はおすすめです。評価に入れて、期末に賞与の形でしっかり反映するわけです。

 

社員の皆さんが常に頭の中で「今、うちの会社のどの部署でどんな人材が足りないか」を意識してもらうようにすることが、とにかく大事。その状態で、知り合いとの飲み会とか、前職の仲間との食事会とかに出かけていくと、「あ、そうだ!」と声をかけてもらいやすくなります。経営者としては、それが当たり前の職場環境を作るということですね。

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採用がうまくいっている経営者が必ずやる朝の30分習慣

森本

その他、採用の流儀としては、「ダイレクトリクルーティング」という方法があります。これは社長自ら直接求職者をスカウトをするということ。これをとにかく一日10分でも15分でもやってくださいもう知り合いの経営者の方に口酸っぱく言っていることですが、毎朝30分必ずLinkedinをチェックして、「この人に会いたい!」と思ったらランチに誘ってください、と。あるいはX(旧Twitter)をチェックして「この人、面白そう!」と思ったら、メッセージを送って会ってください、と。とにかく候補者に会いまくるんです。

 

ある経営者の方は、ランチタイムは毎日リクルーティングの時間に充てていたりするほどです。そのくらい経営者にとって「採用」は重要です。もうどこに行っても何していても「いい人材」を探すという意識でいてください。私のまわりの上場会社の社長の方だと、だいたい40-50%の時間は採用に使われています

 

「社長=最終面接」と皆さん思われているかもしれませんが、そうじゃないんです。むしろ、初対面こそ社長です。なぜなら、優秀な人材こそ、第一印象で決めるから。第一印象で会社の魅力を感じてもらえなければ、まず入社してもらえないと思ってください。これを聞いて「大変だな」と思った方もいると思いますが、採用がうまくいっている会社は、一回目から社長が出てくるケースがとても多いですね。

 

最近、ベンチャー界隈で話題になっているツールがあります。「大谷翔平君 夢への道しるべ」、通称「大谷翔平プレゼン」というツール。ご存知の方もいるかもしれませんが、大谷翔平選手が日本ハム入団を決めるきっかけになった名プレゼンがありまして。それは、最初からメジャーリーグを目指していた大谷選手に「メジャーリーグという頂上を目指すなら、どこの球団に入れば頂上まで最短ルートでいけるか? 答えはうちのチームだよ」と語りかけるという内容なのですが、それをわかりやすくプレゼンテーションにまとめたのが「大谷翔平プレゼン」です。ググったら出てくるので、ぜひ皆さんチェックして見てください。

 

例えば、すごく優秀な方が「将来、自分のキャリアビジョンはこうだ」と語られた場合、もしそれが自分の会社内では実現できなさそうなビジョンであっても、経営者の皆さんには諦めて欲しくないんです。そんな時は「うちの会社を経て、そのビジョンに向かおうよ」と「大谷翔平プレゼン」風に口説いていただきたい。

古谷

そのためには、まずは「相手(求職者)のビジョンを聞く」ということですね。

森本

そうです!自分の会社のアピールより先に、相手のビジョンを聞くことが大切です。一方的に、皆さんの会社の魅力を伝えるだけじゃなくて、相手が「何をやりたいか(Will)」を上手に聞き出してほしいと思います。

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「経営幹部の採用」でリファーラルは使えるか?

古谷

経営人材もリファーラルで採用できますか?

森本

むしろ、経営人材ほどリファーラルだと思います。経営ボードを、私はよく「5レンジャー」と呼んでいるのですが、この層は特にリファーラルがものを言います。

 

究極的に理想的な「5レンジャー」は、昨日までの青レンジャーが赤レンジャーになれることだと思っています。つまり、普段はCOO(最高執行責任者)をやっているけれども、次の3か月は資金調達をがんばらないといけないから、CFO(最高財務責任者)的な動きもするぞ、といったことですね。「攻め」も「守り」もできる。そういう経営幹部を採用できることが理想です。

会社を成長させていくためには、時にその人自身のビジョンを脇に置いて邁進してもらわないといけないような場面が出てきます。そういう局面では、やはり社長とその経営幹部がどこまでお互いを握れているかがとても重要になってきます。例えば、学生時代、一緒に体育会で同じ釜の飯を食った仲間だとか、「どんなに苦しいことがあっても、こいつだけは絶対に裏切らない」という信頼関係がないと厳しい。社長に対して揺るぎない信頼関係を築き上げるには、普通はとても長い時間がかかりますから。そういう意味で、経営人材のリファーラル採用は重要です。

古谷

外部のネットワークからの「リファーラル採用」もありますか?

森本

その点に関しては、普段から言っておくことが大事です。経営者のコミュニティの中でも「うち今度こういう人材が必要なんだよね」と口に出しておく。もちろんコンフィデンシャルな部分はあると思いますが、可能な範囲でつぶやいておくと、「あ、俺の知り合いにいるよ」と紹介してもらえたりします。そういう紹介は私のまわりでもしょっちゅうあります。

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最近流行りの「カルチャーフィット」を確かめる方法

森本

皆さん、今の経営幹部とすごくいい信頼関係ができていてうまくいっているいい状態と感じられているかもしれませんが、会社を常に成長させていこうとすると、「よりよい出会い」は常に求めていかなければいけないと思います。非連続な成長のためにはそのチャレンジを続けるしかない。時には心地よい「コンフォートゾーン」を抜け出す覚悟も必要です。ずっと仲良くやってきた幹部がいるけれども、「こいつより優秀なやつを採用しないと、今以上の成長はありえない」という局面は必ずありますその意味では、やはり経営者自身が常に狩人のように優秀な人材を求め続けることは絶対に必要です。

古谷

よい採用をするために、「理念」をどのように活かすべきですか?

森本

理念が体現された形が「カルチャー」だと思いますが、採用では「カルチャーフィット」がとても大事ですね。「カルチャー」とは、要は判断軸のことです。AかBか迷った時の拠り所になるもの。会社にとって大事な価値観と言い換えることもできます。

 

最近、経営者の皆さんが、求職者の「カルチャーフィット」を確かめるのによく使われるのがサウナです(笑)。採用プロセスの最終面接が「サウナ」というのはよく聞きます。男女だとできないですが、男性同士の場合。会食じゃなくて、サウナ、なんですね。ベタなところでは、ゴルフ、というケースもありますが。とにかく「本音で話せるかどうか」を確かめたいというわけです。

古谷

「合う人」より「必要な人」を採用しないといけないのはわかるのですが、カルチャーフィットという点では、判断がかなり難しいですよね。

森本

これは難しい! そうですね、強いていえば、何があっても絶対にぶれない「不変の部分」を共有できるかどうか、でしょうか。この根本の部分がズレてるとどうしてもうまくいかないんですね。ですから、私は「ちょっとした違和感」を大事にしてくださいと強調しています。皆さん、人と会話をしていれば違和感をたくさん覚えると思います。でも、その違和感が許容できるものであるかどうか、が重要です。

古谷

違和感の一つ一つを感じ取りながら、「この人となら」というのを見つけ出していく。聞くだけだと難しく感じるかもしれませんが、やはり毎日にように候補者と会い続けているとその感覚も研ぎ澄まされていくのかもしれませんね。私も経営者として、もっと自分の日常の中に「リクルーティングの時間」を持とうと思いました。今日はありがとうございました。

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株式会社morich 

森本 千賀子さん

1970年生まれ。1993年 現リクルートに入社。CxOクラスの採用支援を中心に、3万名超の求職者と接点を持ち2,000名超の転職に携わる。リクルートでは、累計売上実績歴代トップ、全社MVP など受賞歴30回超。2017年 株式会社morichを設立。「オールラウンダーエージェント」として「困ったときのモリチ」をvisionに人材紹介事業のほか、スタートアップ支援やビジネスマッチング等、多様な事業を展開。NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」「ガイアの夜明け」等、「日経on-line」「PRESIDENT」連載や日経新聞「人間発見」にも取り上げられるなどの各種メディアへの出演、『1000人の経営者に信頼される人の仕事の習慣』『本気の転職』等の十数冊の著書の執筆、年間100回以上の講演多数。社外取締役・NPO理事・顧問・アンバサダー、内閣府・厚労省・各種自治体の委員等も歴任し「パラレルキャリア」を意識した多様な働き方を体現。二男(大学生・中学生)の母の顔を持ちながら、子供たちに明るい未来へのバトンを繋いでいくことをミッションにしている。

会社情報

社名
株式会社morich
代表者
代表取締役All Rounder Agent 森本 千賀子さん
本社所在地
〒104-0061 東京都中央区銀座一丁目22番11号 銀座大竹ビジデンス2階
設立
2017年3月3日
事業内容
◇人材紹介事業 / エグゼクティブサーチ事業
◇コンサルティング事業
◇組織・人事・採用関連支援サービス事業
◇ビジネスマッチング(着火人)事業
◇ビジネスパートナー、ビジネスアドバイザリー事業
◇セミナー・研修・講演会・講座関連事業
◇メディア事業
会社サイト
https://morich.jp/
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