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カリスマ創業社長の次
『2代目の苦悩』を乗り越える4つの戦略

カリスマ創業社長の次『2代目の苦悩』を乗り越える4つの戦略

人並はずれた強烈なカリスマ性、経営センス、エネルギーを備え、一代でビジネスを築き上げた創業社長。その「次」を承継する「2代目経営者」は、承継前も、承継後も、自分の経営スタイルを確立するためにさまざまな苦悩に直面するものです。

経営コンサル、税務、M&A、IPOなどから多面的に中小企業の事業承継をサポートしてきた株式会社at A&C 代表取締役・有田佳史(公認会計士)さんに、15年にわたり経営の移行期を迎えた数々の中小企業の理念策定・浸透にたずさわってきた企業理念ラボ 代表・古谷繁明が、お話を伺います。

(聞き手:企業理念ラボ代表 古谷繁明)

※この記事は、2023年1月20日にオンラインで開催された企業理念ラボ主催のウェビナ「カリスマ創業社長の次『2代目の苦悩』を乗り越える4つの戦略」の内容に、一部加筆・修正をしたものです。

お時間のない方は下記から興味のあるトピックを選んで読んでいただくこともできます。

この記事の目次

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戦略❶タイミング:「オヤジが死ぬまで待つ」の先延ばしをやめる

古谷

戦略❶のタイミングについては「『親父が死ぬまで待つ』の先延ばしをやめる」という非常に刺激的なタイトルがついていますが…。今日のオーディエンスの皆様は、2代目ですでに事業を承継されている方が多いようにお見受けします。この点について有田さんはどうお考えですか?

有田

ここで言う「タイミング」とは、狭い意味での代替わりではなく、広い意味での事業承継に関することを指しますが、大きく分けて2つあると思っています。

 

創業者の方が自ら引退する=期限を決めるということが一つ。もう一つは、引き継ぐ側が「自分はこうしていきたい」とある程度のイニシアチブを持って決めていく。この2パターンのいずれかです。

 

「どのように」のHowの部分は難しいので、先に「いつ」のWhenについて話していきましょう。やはり、創業社長が60歳を迎えるタイミングは一つの基準となります。たくさんの経営者の方を見ていて、どれほど優秀な方でも、全盛期は60代までと見受けられます。やはり「60代後半から70代になると、能力的に厳しくなってくる」と自覚される方も多い印象です。また60代後半になると、万が一病気やケガなどをした時に一気に衰えてしまうケースもあり、最悪の場合突然亡くなることも想定されます。

 

「創業社長が60歳を迎えるタイミング」を一つの節目にするのには、もう一つ重要な理由があります。それは子世代が、40代に入り企業人としての経験値が十分なレベルに達するからです。とはいえ、個人差があるので一概には言えませんが。社会人としていろいろな経験を経て、経営を継げるだけの素地ができてくるのも、またこのタイミング。そうしたことを踏まえて「いつ」に関しては、「創業社長が還暦を迎えた時」を一つの基準としてご提案したいと思います。

 

次に、「どのように」世代交代を進めていくかですが、やはり一番大事なのは継ぐ側、つまり2代目社長の方が「覚悟」をきちんと創業社長に伝えることです。会社の将来の経営について、どれほど深く考えているか、どれほど強い思いがあるか。いかに現時点の売上を維持すること(さらに伸ばすこと)にコミットするか。具体的な事業計画書を作り数字として見せることも重要でしょうし、上場など創業社長が成し遂げられなかったビジョンを具体的に描くことも有効です。

 

創業社長の方と日々仕事で接していて痛感するのは、やはり一代で0→1で会社を築き上げてきた方の「覚悟」はものすごいものがあるということです。2代目の方がどれほど優秀でも、その圧倒的な差を埋めることは難しい。基本的には、創業社長より2代目社長が経営者として優れているというケースは稀です。あるとすれば、承継時点で経営難に陥っていたのを立て直したという場合くらいです。なので、2代目社長は、「その差は仕方ない」という前提に立ち、ここから先に述べる「組織力」でカバーしていくことが鍵となります。

古谷

ちなみに、有田さんは、創業社長側と2代目社長のどちらについて仕事をされることが多いですか?

有田

先代の方につくケースもありますし、継ぐ側の方からご相談を受けることもあります。事業そのものや資産を引き継ぐにあたって、ご相談いただくケースが最近増えています。

古谷

(創業者である)会長がご存命でいらっしゃったり、何らかの形で経営に関わっていらっしゃる場合もあると思うのですが、先代との関係でこれまでうまくいった事例やうまくいかなかった事例を教えていただけますか?

有田

先代の方の中にも、キッパリ退任される方と、代表権がなくなってもその他の権限を持ち続け、発言力の強い方とがいらっしゃいます。前者の場合は特に問題はないですが、後者の場合は、過度に顔色を伺いすぎてもダメですし、いろいろと難しい。一方で、権限も発言力もある先代を2代目社長がまったく気にせずにやっていても、思わぬ方向でストップがかかり計画が頓挫、中断することがままあります。やはり、ご存命のうちは、代表権をお持ちでもお持ちでなくても、2代目社長としてはしかるべきタイミングで対面でコミュニケーションをとることが非常に重要です。

古谷

あるところまでは先代が2代目に伴走するが、あるところからは2代目が自分でやるなど、いい線引きの方法はありますか?

有田

一つは代表権を移すタイミングですね。そして、その過程で会社の株式を移す。代表権と株式の移譲、この両面を捉えてスケジューリングをしていく企業が多いです。とはいえ、代表権も株式も持っていないのに影響力が強い先代社長はいらっしゃいます。なので、「真の承継」という意味では、先代に静かに見守ってもらえる状態になった時が「会社を引き継いだ」ということなのかな、と私個人は感じています。

古谷

今日のオーディエンスの皆様の中には「親族承継」ではない形で会社を引き継いだ経営者の方もいます。その場合、前の社長や旧経営メンバーとの付き合い方などはどのような点に注意すればいいでしょうか?

有田

一般的なM&Aのお話になってしまうのですが、「会社としての考え方や経営の向かう先を明らかする」と「既存事業とビジネス面でのシナジーを生み出す」の二段構えだと思います。理念の整備やMVVの策定などで会社の考え方をはっきりさせることももちろん重要ですが、まずはもっと「形式的なこと」に取り組んでもいいでしょう。例えば、我々の専門領域である「会計」ですね。会計は外部の専門家を入れれば比較的短期間である程度きれいに解決できます。

 

組織として融合していくとか、組織として上のステップを目指すとか、そういう点に関してはどうしても時間がかかります。戦略❹で詳しく述べますが、5年から10年はかかるでしょう。これを機械的にやろうとして失敗している事例は多い印象です。

古谷

親族承継にしても、M&Aにしても、新社長に就任してすぐに新しいことをいろいろやろうとするとなかなかハードルが高いのかな、と。順番にやっていく時のポイントなどはありますか?

有田

組織に浸透させていくという意味でうまくいっている企業様では、やっぱり買った側の会社から主力メンバーが出向いて陣頭指揮をとる例が多いです。あるいは、買われる側の社長さんが残ることありきで、方向性をしっかり示した上でグループに取り込まれる例か。後者は、最近のベンチャー企業によく見られる傾向です。

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戦略❷経営戦略:組織と成果を「見える化」して存在感を示す

古谷

戦略❷経営戦略に関して「組織と成果を『見える化』して存在感を示す」というのは、具体的にはどういうことですか?

有田

先代の方が強ければ強いほど、その方のリーダーシップのもと組織化はされているんです。でも、トップダウン的にやってきているので、どうしても「背中で語る」というスタイルになってしまっている傾向にあります。つまり、いろんなことがあまり「見える化」されていない。それをいかに見える化するかが2代目社長の戦略です。

 

戦略❶の箇所でも述べましたが、やはり圧倒的なカリスマ性という点では、2代目社長は創業社長には勝てない。つまり「背中を見せる」というスタイルでは勝ち目はないんです。もし2代目が創業社長と同じように「背中を見せる」というスタイルを踏襲してワンマン的に経営を進めようとすると、それは「わがまま」と捉えられ組織の求心力が衰えてしまうケースがままあります。なので、2代目社長には、「背中」ではなく、「言葉と組織」の力で戦うことをおすすめします。「言葉」とは、まさに戦略❹の「理念」のことなので、ここでは割愛します。

 

「組織と成果を『見える化』する」の「成果」とは、わかりやすく言うと、売上と収益です。当然、両方とも上げていくことが大事ですが、交代したタイミングで、下がることだけは絶対に避けたいですよね。これだけはクリアしないと示しがつかないわけです。売上と収益が代替わりしても下がっていないということを組織内で見える化することで「ちゃんと事業が引き継がれているんだ」という安心感を与えることができます。とはいえ、ビジネス環境が大きく変化している昨今、「下げないこと」さえ非常に難しいのですが…。

 

「成果の見える化」に関して、うまくいっているケースでは、先代の時から売上の規模などを社内に向けて示す習慣が定着しています。利益がどのくらい出ているかについてはあまり言わないんですけど(笑)、少なくとも売上は日常的に共有されている。それを次期社長でも継続しつつ、さらに組織内で「成果に対する評価と報酬」を見える化してフェアなものにしていくことが重要です。その両輪がうまく回ると、承継がスムーズにやれる傾向にあります。

 

承継後も売上が順調に伸びていても、社員にその実感がないと、「先代が退いてから本当に大丈夫か…」と組織に不安が広がります。創業社長は、その点に関しては敏感な方が多くて、成果に対して社員にインセンティブを与え上手に鼓舞しながら会社を成長させてきたわけですが、ややもすると、その報い方が恣意的に決められていたりします。2代目社長が恣意性を排しつつルール化し、社員の皆様に頑張っていただく風土を機能させ続けることが大切です。

 

私たちは立場上、いろいろな企業様の会計を拝見しますが、創業社長の采配のもとでは、恣意性はあるとはいえ、貢献と報酬はそれなりに釣り合っている印象です。会社の成長に貢献した方は、高いポジションに就いて、それなりのお給料を得ていらっしゃいます。明確にルール化はされていなくても、そのあたりのセンスは流石だな、と感服します。

引き継いだ側からすると、先代からの売上レベルをキープしないといけないというプレッシャーは非常に大きいと思います。その対応策として、「上場を目指す」というケースも少なくありません。上場を目指すとなると、既存ビジネスを伸ばしつつ、新しい収益を作っていくこと、外部のリソースも活用しながら明確な戦略を立てる必要性に迫られます。その過程が功を奏して、上場準備中に伸びていく企業様もいらっしゃいます。「伸びているから上場する」わけですが、「上場を目指すと決めたから伸びる」という逆の因果関係も働いているように感じます。

古谷

「見える化」はまさに「言うは易し、行うは難し」の領域ですが、具体的にはどんな戦略がいいですか?

有田

例えば、社内のルールのおいても、先代の経営者の方の影響力がものすごく強くて、下支えする番頭の方がうまくハンドリングしている場合、その方々自身がルールになってしまいがち。ですので、いわば属人的になってしまっているルールから脱していく必要があります。まずは、ちゃんと権限移譲をすることです。取締役会を機能させて、そこでの決定を組織内でブレイクダウンしていきます。

 

やはり創業社長の経営的な嗅覚(勘)には並はずれたものがあるので、何をやってもそれほど大きな失敗はなさらないんですね。あるいは、失敗しても、そのあとのリカバリー力がまた半端ないですし…。なので、2代目社長としては、先代の「勘」に勝る部分を作っていくしかないわけです。じゃあどうするかと言えば、各領域を複数人で専門的に対応する以外に方法はないですが、これをやり切れば、突出した経営者がいなくても着実に成長できる、真にレジリエンス(回復力)の高い組織になれると思います。

 

上場するにしろ、新規事業をやるにしろ、カリスマ性なき「推進力」をいかに組織全体でつけていくか。2代目社長は、組織力で補うしかありません。カリスマ性は持って生まれたものですから、後からはつけられない。中には、後継者を子どもの頃から厳しく育て上げて、いわば自分のコピーのような2代目を準備している創業社長もいらっしゃいますが、それは私の知る限り例外中の例外です。大半は、「カリスマ性で回っている組織」と「創業社長ほどのカリスマ性はない2代目社長」があって、さてどうしようか?と悩んでいらっしゃる企業様です。

古谷

2代目社長が成果を出そうとする際、既存のビジネスを伸ばす方向にいくのですか?それとも新規事業を創造する方向にいくのですか?

有田

今は二軸ですね。既存のビジネスを伸ばすことに関しては、国内マーケット全体が伸びていく業種ではないケースが多いので、「シェアをいかに拡大するか」が論点となります。とはいえ、シェア拡大だけでは限界があるため、既存ビジネスと親しい領域で新しいシナジーを生み出す戦略をとっていらっしゃる企業様は多いです。

 

既存ビジネスでのシェア拡大を目指している企業は、製造系や建設系ですね。既存事業が毎年倍々で成長することは見込めない環境下で、数十億円の売上がある。しかし、その売上を維持したり微増させたりしていくのに、採用を見直すなど結構な投資が必要というフェーズにある。そういうケースがよくあります。その中で既存ビジネスとはまったく違った新しいことを始めるよりは、できるだけ親しい領域でシナジーを取りにいこうという戦略を立てられるわけです。

古谷

先ほど「採用」という言葉が出ましたが、業績は伸びていても「採用」で苦戦する企業は多い印象です。承継を経て採用がうまくいった例はありますか?

有田

ありますね。製造系の人材派遣を手掛けられている会社の例ですが、「製造」でなおかつ「派遣」となると採用でかなり苦戦されていました。それを、世代交代を機に理念を含め会社のブランディング戦略を大々的に刷新されたんですね。対外的にも伝わりやすい文言にして、Tiktokを活用するなど情報発信を続けていらっしゃいました。その結果、新卒採用で成果が出ましたし、スキルアップや昇給の機会も整備され組織がいい方向に回り始めました。

 

先代の時代は、日本の製造業に勢いがあったので業績も伸びていたのですが、承継のタイミングではかなり落ちてきていたのを戦略を刷新したことで持ち直したわけです。2代目社長も採用では自ら前に出ていき、動画にも出演されるなど努力されていました。

 

特に歴史のある中小企業には、経営面でしっかりとした基盤があるケースが多いので、理念やブランディングを刷新し、今の時代に合った発信の仕方に変えることで、採用面でも、IPO前のキラキラしたベンチャー企業と肩を並べるところまで来られると思います。ベンチャー企業は総じて、MVVなどの「見せ方」がきらびやかで一見上手です。しかし、創業から日が浅いこともあり中身が伴っていないことも多々あるので、地方も中小企業でも十分戦えるのではないかと感じています。

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戦略❸組織:先代が鍛え上げた「番頭チーム」を味方にし組織化する

古谷

戦略❸の組織に関して、「先代が鍛え上げた『番頭チーム』を味方にし組織化する」は、2代目社長が、先代のチームといかにうまくコラボレーションするかという話だと思いますが。これに関してはいかがでしょうか?

有田

「番頭」というと、すごく古めかしい言葉に聞こえますが、具体的には、創業者の方がある事業規模まで会社を成長させ、組織化された時に、人事やお金の部分をきっちり握ってハンドリングしている人材をここでは「番頭」と呼んでいます。

 

「番頭」の方は、創業社長と若い頃から二人三脚で長年仕事をしてきているので、創業社長が引退されるタイミングと前後して退職を迎えられるケースがよくあります。なので、その「番頭」が果たされていた部分も含めてうまく引き継いでいくことが重要になってきます。

 

まず、組織化に関しては、創業社長と番頭の方は阿吽の呼吸でやってきている部分が多分にあるため、側から見るとわかりづらいルールやチェック機能が働いていることがままあります。そのあたりを承継の時点で「見える化」していきます。

 

また、ほとんどの場合、創業社長と番頭の方の主従関係ははっきりしていますが、今の時代の社長は、経営メンバー同士が上下のないフラットな関係性であることを好む傾向にあります。とはいえ、関係性が変わっても、求められる役割は同じなので、「番頭」の方が担ってきた機能を、分割して見える化し、次世代の経営メンバーに引き継いでいくことが大事です。

 

「番頭」の方がまだ在職されているうちは、2代目社長がうまく活用することをおすすめします。やはり「番頭」の方は、創業社長同様「勘」が優れていることが多い。特にリスクを嗅ぎ取る能力は並はずれているケースをよくお見受けします。私たちも一緒に仕事をする中で、「番頭」の方があれこれうるさく口出しされてくることがあり、内心「そんなに邪魔しなくても…」と思っていても、最終的にはその口出しに救われたという場面が何度かありました。

 

したがって、うまくコミュニケーションをとりながら、次世代の考え方も伝えつつ「優秀なチェック機能」として働いていただくのがよいと思います。特に、「番頭」の中でも「金庫番」と呼ばれる方は、先代からの絶大なる信頼のもとそのポジションに就いていらっしゃいます。過去にさまざまな難局を乗り越えられてきただけに、そのリスク感知能力は非常に高い。「番頭」の中でも特に2代目社長がうまくお付き合いをして活かしていきたい人材です。

古谷

次世代メンバーの育成は、どこの企業様も苦労されている点かなと思いますが、うまくいっている例があれば教えてください。

有田

うまくいっている例では、「迂回ルート」が機能していることが多いですね。つまり次世代メンバーの教育の方向性について、先代と次期社長の間でやりとりがされていて、先代から番頭チームに指示がいって動いている場合です。番頭チームもやはり先代から言われた方がよく動くので。先代がご健在で番頭チームも在職の場合は、この「迂回ルート」を活用しての次世代メンバー育成も一つの手です。

 

とにかく、2代目社長としては、創業社長の「番頭チーム」をうまく活用することに尽きるのですが、これがバチバチに衝突してしまうと、当然ながら、物事は頓挫します。私たちがこれまで見てきたケースでもそうでした。

 

どうしても強くなってしまう「創業社長&番頭チーム」を抑えるには、こまめにコミュニケーションをとる以外ないと思います。特に、引き継ぐ側が、自分はこういう思いで経営をしていきたいという気持ちを意識的に伝える必要があります。その際に私たちのような外部リソースを頼るという方法もあります。

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戦略❹理念:「創業者のカリスマ性」から波風立てずに卒業する

古谷

戦略❹の理念に関して「『創業者のカリスマ性』から波風立てずに卒業する」とは、理念をうまく引き継ぎ、どう発展させていくかについてのお話かなと思いますが、詳しく教えてください。

有田

我々が事業承継などで関わる創業社長の皆様は、ある程度の規模まで会社を成長させてこられた方なので、当然、経営理念や社訓といったものをご自身で言語化されています。「実績」と「思い」と「言葉」があって、それこそまさに魂を込めて経営されている。それが創業社長であれば、代替わりしてからも理念やMVVに代表されるような「言葉」の重要性は変わらないと思います。

 

一方、私たちは事業再生をすることになった企業様と関わらせていただく機会がありますが、そういうケースでは、理念が曖昧になり、目指す方向性もなあなあになっていることがよくあります。もちろん、原因はそれだけではないですが、会社の経営が下向きになる時、やはり「理念」が本来あるべき形で機能してないことが多いです。

 

理念の力だけで会社が伸びていくことはないものの、会社の成長という点に関しては非常に重要なポイントです。歴史ある中小企業を見ていても、IPOを目指すベンチャー企業を見ていても、企業理念を言語化して向かうべき方向に組織を導けているケースが、短期間で成長を遂げる傾向にあります。上場までのペースも早いですね。

 

事業承継という観点でも、理念そのものを正しく引き継ぐ必要があります。「言葉」だけであれば、明確に掲げられているものなので、そのまま引き継げばいいのかもしれませんが、理念に込められた「思い」や「考え方」に関しては、時代に合わせて形を変えていかないと、現状にフィットせず機能しなくなります。

 

組織の仕組みを引き継ぐだけであれば、1年程度でできると思いますが、そこに「思い」や「考え方」まできちんと含めた承継となると、やはり5-10年はかかります。それは先にも述べた通りです。

古谷

理念には、まさに創業社長の「思い」が色濃く反映されている場合も少なくありませんよね。また事業承継をした時点で、創業社長の存在感がなくなることもないと思いますが、そのあたりはいかがでしょうか?

有田

先代の方の存在感がなくなることはないと思います。やはりそれだけの実績がある方なのでご本人が存在感を消そうとしてもそう簡単になくなるものではないですよね。その世代の方が全員引退するなどのタイミングを迎えればまた変わってくるかもしれませんが。

 

繰り返しになりますが、親子であっても、ちゃんと経営者同士として膝をつきあわせて対話をするということに尽きると思います。親族承継がうまくいっている企業様では、重要な決め事に関して、次期社長が先代のところに出向いて丁寧に対話を重ねています。例えば、引き継ぐ側の息子さんは東京にいらっしゃって、先代が地方にいらっしゃるというケースでも、会社として重大な方向転換がある時は、息子さんが地方に足を運ばれています。

 

単純に顔色を伺ってそうするのではなく、実益を含めて意見や考えを先代に聞きに行っている方が、私の知る限り、伸びている企業の中に多いですね。

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株式会社at H&I/株式会社at A&C  

有田 佳史さん

会計事務所で勤務したのち、2010年に有限責任監査法人トーマツに入社。主に法定監査業務やIPO支援業務等に従事する。2015年に有田公認会計士事務所を設立し、IPO支援業務、財務デューデリジェンス等に従事、上場企業から中小企業及びベンチャー企業を支援。2016年に税理士登録、その後株式会社at A&Cを創業。日本M&A協会加盟。

会社情報

社名
株式会社at H&I/株式会社at A&C
代表者
代表取締役 有田 佳史/富田 直樹
本社所在地
東京都港区白金台5-15-5 トゥワインデール2階
従業員数
24名(グループ全体: 2022年6月現在)
創業
2015年3月
設立
2018年6月
事業内容
・IPO・上場企業支援業務
・事業承継・M&A支援業務
会社サイト
https://at-firms.co.jp/
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