INTERVIEW

ワンマン創業社長から引き継いだ
2代目として今やっておきたいこと

もし、一つでも当てはまることがあれば、
この記事がお役に立てるかもしれません。

  • ワンマン創業社長の次の2代目として、上手に事業承継していきたい。
  • 社長である自分の考えや言葉が、社員にうまく伝わっていない気がする。
  • 職場に「心理的安全性」を作りたいが、やり方がわからない。

「社長がある日突然不在になっても、会社が混乱なく回るようにしておきたい…」ワンマン経営者だった父親がガンで倒れ、サラリーマンから突然経営に携わることになったUG+(ウシジマグループ)CEOの 牛島 護厳さん。自身の経験から、49歳にして「自分の次」を準備を始めました。

社長である自分の「頭の中」にあることを、会社のこれからを作っていく若い世代に繋ぎ、経営者が変わっても成長を続けられる「人」と「組織」を生み出すには?「危機感を持っているのは社長の自分だけ」という状況から、「いつ社長がいなくなっても大丈夫」と感じられるようになるまでの変化を聞きました。

 

ワンマン社長だった父が亡くなり、サラリーマンから経営者に

ワンマン社長だった父が亡くなり、サラリーマンから経営者に

先代社長の父から会社を引き継いで20年、現在49歳の2代目社長として僕がやらないといけないこと。それをずっと考えていました。

 

29歳の時、先代社長の父親が肝臓ガンで余命3年と宣告され、サラリーマンをやめてUG+の仕事を始めました。でも、父は非常に理不尽なところのある性格で、なおかつパワフルでワンマンだったこともあり、僕は3年間で疲労困憊してしまいました。やがて宣告された通り父が亡くなり、いきなりトップ不在となったことで会社は混乱に陥ります。僕は当時まだ32歳でした。

 

その時、トップは次の世代の人たちにいつでも「経営」を渡せる準備をしておかないといけないと強く感じました。そんな経験を経ていたので、経営者として中盤に差し掛かった今、自分がいなくても当たり前に会社が回っていく体制を作る必要があると強く感じていました。

「社長の頭の中」をわかりやすく社内に伝えたい

でも、現実には、「トップが突然いなくなる」という状況を本当の意味で理解し、危機感を抱いているのは僕だけではないかと密かに心配していましたUG+は、傘下に会社がいくつかあるグループ企業で、全体で650名の従業員がいますが、そのなかで各法人のトップでさえ、いつ訪れるか知れない「危機」をわかっていなかったのではないかと危惧していました。

 

こうした背景があり、いつ社長の僕がいなくなっても大丈夫なように、僕が先代から引き継いだこと、そして社長に就任してから20年の間に経営者として培ったこと、そして未来に向けて考えていることなどを、言葉やビジュアルにして「共有できる形」にしておきたい考えました。

 

それが、企業理念ラボさんとの理念策定・浸透のプロジェクトに取り組むことにした理由です。

こうしてスタートしたプロジェクトですが、メンバーには社内の次世代リーダーを中心に7名を集めました。そして、このプロジェクトの会議を「これから会議」と名づけました。

僕は、何事も「現象をひと言であらわすこと」にこだわるタイプ。言葉は数式のように、誰にでも一つの意味だけが伝わるもの、ムダがなく、わかりやすいものでなければならないと信じているので、会社の将来を決める大事なプロジェクトの会議をこうネーミングしました。これなら、みんなの頭に入りやすいかな、と。

僕がいなくなっても回っていく「会社のこれから」を、会社のみんなで作り上げていく会議だから、「これから会議」。このフレーズを社内で発表した時、職員からの反応がよくて、なかには「涙が出そうになった」と言ってくれる人もいました。

社長として「自己開示」したことで、会議の空気がガラリと変わった

社長として「自己開示」したことで、会議の空気がガラリと変わった

プロジェクトを始めてみると、意外な発見がありました。それは、会社の未来を担う次世代リーダーと深い話ができるようになったこと

 

社長の僕としては、以前からメンバーと一緒に食事に行ったり酒を飲んだりしていろんな話をしてきたつもりでした。でも、実は、僕が思っていたほど社員は、僕という人間のことを知らなかった(笑)。

 

例えば、僕は、ワンマンな父親の命令で小学3年生にして東京で一人暮らしをさせられた経験があります。父の仕事の関係で「お前たちも東京に来い」と言われ幼稚園の頃に連れていかれたのですが、数年して父が地元・福岡に帰ることになった際、「おまえは残って、1年間だけ頑張れ」と月5万円渡され1軒家で生活することに……。

子どもには本当につらい経験でしたが、それをプロジェクト中に自己開示したことで、社員との距離が縮まり、深いコミュニケーションが取れるようになりました。

飲み会と社内会議の間のような、「深い話ができる場」に

それは、理念浸透アドバイザーという外部の方がプロジェクトに参画していたことも大きく影響していたと思います。

 

社内メンバーだけでは、どうしても業務に限られた 表面的な議論に終始してしまいがちですが、社外メンバーがうまくファシリテートしてくれることで、お互いの人間性を知った上で、踏み込んだ議論ができるようなったと強く感じました。これは、本当に大きな変化だと思いますね。

 

こうしたコミュニケーションが社内で取れるようになったことを、「会社のこれから」にどんどん生かしていきたいと思います。

 

プロジェクト始動前から、もともとUG+のメンバーは仲がよく、休日に一緒に遊びに出かけたりしています。また、みんなには美味しいものをたくさん食べてほしいので、基本的には予算を定めずに飲み会を開いたりもしています。そのせいか、会社の飲み会の出席率はほぼ100%です。

 

でも、やっぱり人数が増えたり、会議の場になったりすると、社長として少しお堅くカッコつけてしまうこともある。だから「これから会議」では、自己開示をする深いコミュニケーションで絆を築くように心がけています。その意味でも、「これから会議」は重要な役割を果たしているんです。

トップとして「社内に心理的安全性を生み出すコツ」を習得

トップとして「社内に心理的安全性を生み出すコツ」を習得

プロジェクトを通じていろいろな成果がありましたが、一番は社内に「心理的安全性」が生まれたこと。

 

最初は、「これから会議」もどこか社内会議の延長のようなところがありました。でも、徐々にみんなが僕のことを一人の人間としてよく知ってくれるようになるにつれ、お互いの言葉が通じるようになったな、と。いわゆる「心理的安全性」が生まれたのかもしれません。

 

僕自身はバーッと相手の懐に入っていくのが好きなタイプですが、社員からすると、社長や理事長の懐に入ることはなかなか難しいですよね。だから、まずはトップである僕が、弱いところも含めて自分がどんな人間かをバーンと見せられる場を持つことが大事なんですね。次は幹部クラスもだんだん変わっていくと思います。

時代が変わっても「グルー全体をまとめられる言葉」が見つかった

このプロジェクトを通じて、「会社のこれから」を作っていく大切な言葉がたくさん生まれましたが、一番は「いい人生にしよう」という表現ですね。このフレーズに、UGグループのすべてが凝縮されていると感じます。

 

僕には、「人間の幸福」について、経営者として一つの持論があります。「自分幸福論と他人幸福論」と呼んでいる話でもあるのですが、簡単にいうと、自分より他人を先に幸せにしろということです。

 

たとえば、ある会社の社長が仕事でうまくいってお金を稼いだら幸福だけど、社員に苦労させておきながら自分だけ幸福になってしまうと、本当に困った時に社員は誰も助けてくれなくなる。逆に、まずは周囲に先に幸福になってもらったら、それ自体で真ん中にいる社長は幸福になれるし、困った時も助けてもらえる。だから、まずは他人の幸福を優先した方がいいという考え方です。

 

だから僕にとっては、僕と関わった人が「本当によかった」「嬉しい」「楽しい」って言ってくれることが大きな喜びなんです。「いい人生にしよう」には、そうした考え方が、ムダなくシンプルに含まれているから好きです。

 

それから「いい人生にしよう」の「しよう」の部分も好き。他人に頼ってばかりじゃなくて、自分でもちょっと頑張っていい人生にしようという意気込みが込められているからです。社長の僕だけじゃない、みんなの人生、みんなの幸福。素晴らしいことだと思います。

マーケティング施策でも、人事研修でもない「効果」

マーケティング施策でも、人事研修でもない「効果」

僕が社長をしている間も、いなくなってからも、きっといろんなことが起こるでしょう。でも、会社は「カネ」と「ヒト」がしっかりしていれば決して潰れないと思っています。

 

「カネ」は稼げるときに稼いで、貯める。

 

「ヒト」はいろいろな能力を持った人が必要で、個々の優秀さよりもチームワークが重要です。よく他の経営者の方から聞かれるような「うちはなかなか人が揃ってなくてね」という見方ではなく、「このメンバーでやる」という覚悟と、どうチームを育むかの方法論が大切だと思います。

 

商品力やビジネススキームよりも、そこで働いている「人」が大事。ただ、その「人」を繋ぐことはとても難しいですよね。「人」が点から線になり、線から面になり、最後には世代間の関係性ができあがり、立体になっていく必要があります。

 

いろいろ話しましたが、総じて、今回のプロジェクトは、UG+にとって非常によかったと感じています。

 

仕事は、目的がなければ、ただつらいだけだからです。このプロジェクトはまさに仕事の目的を言葉にして、社内のみんなに共有する取り組みでした。マーケティングの施策でもないし、モチベーションアップのための研修や人事制度整備でもない

 

理念浸透アドバイザーの方の伴走の仕方には、とても満足しています。

 

彼らは「コンサルタント」ではないところがいい。いわゆる「コンサルタント」と呼ばれる人たちには、結論ありきで監督をするようなタイプが多く、一緒に答えを探しながら寄り添って伴走してくれるタイプが少ない印象です。でも、今回お世話になった理念浸透アドバイザーの方は、一緒に走ってくれました。「いい結論を一緒に作っていきましょう」という姿勢が、ありがたかったですね。

 

これからの日本では労働人口が減っていきますが、それでも「人」に投資ができる会社になって、僕がいなくなっても確実に強くなっていってくれるんじゃないかと実感できる。「自分がいなくなった時」を考えても、不安に感じることはないですね。

「企業理念ラボ」には、

企業理念の言語化や浸透策の
事例が豊富にございます。
ご関心のある方は
お気軽にお問い合わせください。

企業理念ラボにちょっと相談してみる。 | 企業理念ラボ

UG+ 

牛島 護厳さん

株式会社筑後自動車学校 代表取締役、社会福祉法人 幸輪福祉会 理事長、社会福祉法人幸輪会 理事長、学校法人 幸輪学園 理事長。650名のUG⁺(USHIJIMA GROUP)を統括するCEO。「いい人生にしよう。」をグループ経営のコンセプトとして定め、経営に没頭する日々。

会社情報

社名
UG+(ウシジマグループ)
代表者
代表取締役 牛島 護厳
本社所在地
福岡県筑後市大字徳久86
従業員数
650人(2022年時点)
創業
1963年
事業内容
自動車学校・介護福祉施設・幼稚園・保育園の運営

筑後自動車学校
https://c-shako.co.jp

幸輪福祉会
https://kourinfukushi.or.jp

幸輪会
https://kourinkai.com

学校法人幸輪学園
https://takamure.ac.jp
  • 企業理念ラボにちょっと相談してみる。 | 企業理念ラボ
  • 【経営者限定 1時間×2回のオンライン診断】企業理念の刷新でスッキリ解決できる「50の経営課題」 | 企業理念診断

RECOMMENDおすすめ記事

売上99%減、17年連続赤字の挑戦から  無添加石けんのビジョナリーブランドへ
INTERVIEW

売上99%減、17年連続赤字の挑戦から
無添加石けんのビジョナリーブランドへ

シャボン玉石けん株式会社
森田 隼人さん
売上99%減、17年連続赤字の挑戦から  無添加石けんのビジョナリーブランドへ
INTERVIEW

コロナ禍で組織崩壊の危機が続発、
「クレドポイント」導入で組織の立て直し

株式会社アーキタイプ
代表取締役 齋藤 順一さん
売上99%減、17年連続赤字の挑戦から  無添加石けんのビジョナリーブランドへ
INTERVIEW

「リファーラル採用=タダ」と思っている
中小企業社長に知ってほしい採用の鉄則

株式会社morich
代表取締役 森本 千賀子さん
売上99%減、17年連続赤字の挑戦から  無添加石けんのビジョナリーブランドへ
INTERVIEW

明治14年創業、環境に正しい「印刷しない印刷会社」
大川印刷の生き残り戦略

株式会社大川印刷
大川 哲郎さん