INTERVIEW

M&A後のビジョン策定で、
「どこか他人事の社員たち」を本気にし強い組織へ

もし、一つでも当てはまることがあれば、この記事がお役に立てるかもしれません。

  • M&A(企業合併)で、カルチャーの異なる組織が共存していてまとまらない。
  • 企業理念を刷新したいが、「外注するコスト」に社内から反対の声が。
  • 当事者意識がなく「どこか他人事の社員たち」に経営層がヤキモキ。

M&A(企業合併)は、企業が成長するチャンスにもなれば、双方のカルチャーのバラツキから組織を弱体化させてしまう原因にもなります。そうした局面で、会社のビジョン策定がさまざまな課題を乗り越える糸口になることも珍しくありません。

 

「中長期の経営戦略を描くための全社的な方向性が見えない」「社員が会社に関して当事者意識を持ってくれない」「社員同士の繋がりが希薄」などなど、経営層のフラストレーションがビジョン策定をきっかけに解決に向かった「株式会社ユビキタスAI」さんの例をご紹介します。

M&A後のビジョン策定が、トップダウン型組織を脱する糸口に

M&A後のビジョン策定が、トップダウン型組織を脱する糸口に

今回は、M&Aをきっかけに会社のビジョン策定をした結果、組織にいろいろとポジティブな変化が起きたことについてお話していきたいと思いますが、まずそれまでの流れをご説明すると、弊社は、2017年4月にM&Aした会社と2018年7月に合併をしました。それにより、メーカーと商社、上場企業と非上場企業など、会社運営の背景や前提条件が大きく異なる事業体により構成されることになったのです。

 

コロナ禍で100年に一度の危機と変化が起こり、当社の業績や業界にも大きな影響がありました。次の中期経営計画を立案するタイミングで、この変化に対応した会社の方向性を示すためにも、ビジョンを再定義する必要があるのでは、と考えました。中堅社員の育成・コーチングをお願いしている方から「ビジョンを再定義するタイミングではないか」とアドバイスをいただいたこともきっかけの一つでした。

 

ただ、トップダウンでビジョンを考えただけでは浸透しないだろうと悩んでいました。

そんな時に「企業理念ラボ」を主宰する理念浸透アドバイザーの古谷繁明さんとの繋がりを得ました。

転職者ばかりでバラバラのチームが、一つにまとまって

転職者ばかりでバラバラのチームが、一つにまとまって

今回の弊社のビジョン策定は、会社の中核として業務に携わってくれているメンバーに担当してもらいました。しかし、合併により背景の異なる会社が一つになったことに加え、プロジェクトメンバーがほぼ転職者で社歴も経験もバラバラなので、チーム内でさえ考えを共有するのが難しいという環境からのスタートでした。

 

最初に取り組むべきは、メンバーの意識を一つにすること。普段は、担当業務がそれぞれに専門的で多忙なため、たがいに会話をする機会もなく繋がりが希薄でした。また個々のメンバーの組織マネジメント経験が十分ではなく、崖っぷちに追い込まれて仕事をするといった経験もあまりなかったと思います。

 

プロジェクト始動当初は、どこか他人事で「外部の理念浸透アドバイザーの方のリードに従っていればいい」という受身な態度でした。自分の考えを強く推すことも、他のメンバーの意見に指摘することもないまま、なんとなく議論が進み、最大公約数をまとめた「落としどころ」のような案が出されていました。

 

実はビジョン策定では、「アウトプット」ももちろん重要ですが、作る過程を通じて社員の意識が変化していくことが非常に大事です上記のような状況はビジョン策定の現場ではよくあることだそうで、それを心得ているアドバイザーの方が「あなたたち次第ですから」と突き放す場面も見られました。その後、メンバーが真剣に主体的に取り組むようになったのをよく覚えています。

社員による「役員への忖度」から抜け出すには?

社員による「役員への忖度」から抜け出すには?

それでも、まだ私たち経営陣にプロジェクトメンバーから届けられる案は、役員の考えを忖度するような、きれいな言葉が並んでいるだけのものでした。ただ、本人たちも「自分たちの言葉になっていない」と焦りを感じ、もがくようになっていました。プロジェクト全体を通じて、メンバーである社員一人ひとりが、「会社側の人間なんだよ」ということを腹落ちして理解していったように感じます。

 

こうして約半年かけて無事にビジョンが策定されたわけですが、やってみて結果的に「外部の力」を借りてよかったな、と思っています。というのも、もし社内メンバーだけでやっていたら、社内の序列に従ってトップダウンで事が進んでしまい、過去の延長線上にあるものしか生まれなかっただろうと容易に予想されたからです。

 

また、ビジョン策定には経営陣が直接関与せず、メンバーに任せたことも正解でした。社員が自分たちのビジョンとして語れるものになったからです。もし経営陣が陣頭指揮をとっていたら、社員が忖度を重ね、誰の腑にも落ちないビジョンになっていたでしょう。そうしたチーム構成に関するエンカレッジさんのアドバイスも適切でした。

「ビジョンは社長主導で作るべき」と思っていたら、要注意

経営の判断として、ビジョンを外部に依頼することを「コスト」と考えがちです。私自身「ビジョンなんて自前で作って当たり前」と考えていましたし、社内にも「自前で決めないビジョンに意味があるんですか?」という指摘がありました。でも、コストにこだわり自前で作ろうとしていたら、ここまでいいビジョンにはならなかったと確信しています。よいモノを生み出すために、プロフェッショナルの力を借りることの重要性を痛感しました。

 

外部に依頼して、どこまで自分たちのことを理解してもらえるのか、納得できるものになるのかは気がかりでした。「コストをかけたけど、こんなもんでしょ」と社内から言われはしないかも不安でした。

 

特にオーナー企業では、経営者の思い入れがありますし、経営層からすると社員が頼りなく見えるので、「社長主導でビジョンを作るべき」と考えられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、組織が機能するには社員の協力と、社員一人ひとりが納得して仕事ができる環境が不可欠です。そう考えると、社員にとって行動指針となるビジョンが、社員目線で腹落ちできるものであることがとても重要になってきます。

 

社員一人ひとりに、「こうあって欲しい」と考える会社の姿を言葉にする仕事に関わってもらうことで、多少時間はかかっても、将来的に「良い会社」「強い会社」になっていくのではないかと、今回のビジョン策定を通じて私自身が学びました。

 

「ビジョンの策定」の次は、「ビジョンの浸透」が待っていますが、これも社員に任せることで会社の成長の機会にしていきたいと思っています。

「企業理念ラボ」には、

企業理念の言語化や浸透策の
事例が豊富にございます。
ご関心のある方は
お気軽にお問い合わせください。

企業理念ラボにちょっと相談してみる。 | 企業理念ラボ

株式会社ユビキタスAI 

長谷川 聡さん

1990年成蹊大法卒。同年ダイヤモンドファクター(現三菱UFJファクター)入社。2008年ユビキタスAIコーポレーション入社。その後、代表取締役社長に就任。

会社情報

社名
株式会社ユビキタスAI
代表者
代表取締役社長 長谷川 聡
本社所在地
東京都新宿区西新宿1-23-7 新宿ファーストウエスト17F
従業員数
社員90名、グループ120名(2022年10月31日現在)
創業
2001年5月7日
資本金
14億8348万円(2022年3月31日現在)
事業内容
事業内容:電子・電気機器開発に必要なソフトウェアの開発・輸入・販売を中心に製造業顧客が必要とするテクノロジー・サービスの提供
会社サイト
https://www.ubiquitous-ai.com/
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