「社是と社訓」は30年間、社長室の壁に貼ってあるだけ…
3年間の「理念浸透」で社内の雰囲気がジワジワ前向きに!
もし、一つでも当てはまることがあれば、この記事がお役に立てるかもしれません。
- 業界的に若い社員が希望を持って働き続けられる状況にない。
- ずっと家族経営でやってきたので、会社の方針が言葉になっていない。
- 会社の中で経営理念をちゃんと理解しているのは社長の自分だけ。
「自分が死んだら会社はどうなるんだろう?」オーナー経営者なら、誰しも感じたことのある不安だと思います。時代の変化が激しく、将来の売上も業界全体の行く末も、どうなるか見えない。このままでは子どもや社員に継がせて大丈夫かわからない。そんな不安が、年に何度も胸をよぎる方も少なくないはずです。
昭和21(1946)年創業の株式会社ミツヤマ電気の3代目社長、光山敬一(みつやま・けいいち)さんもオーナー経営者として、同じ不安を抱えていました。先代の社長だった父親から会社を引き継いで20年、次の世代に会社をうまく繋いでいきたい。その想いを叶えるために、できることとは?
理念の刷新に合わせてリニューアルした会社のホームページ。この先、時代がどう変化しても変わらない「いい光の提供」というミツヤマ電気さんにとっての「軸」をシンプルに表現。
斜陽産業でも「次の世代」が希望を持てるように
ひと言で言えば、「次の世代に繋がること」を残したかったんです。
ミツヤマ電気はもともと電気製品の卸売りの会社です。昔ながらの商売で古い慣習が根強くあるので、離職率が高く、業界全体に元気がありません。つまり若い世代がやりがいを感じる業界ではなく、このままだと将来性はないことに強い危機感を覚えていました。
「会社に理念を作りたい」という想いが最初にあったわけではなく、若い世代が希望を持って働けるように「未来に繋がる何かが欲しい。そのためには理念を作る必要があるんじゃないか」という発想でした。
「社長室の壁に貼ったままの理念」に命を吹き込みたい
ミツヤマ電気を創業したのは私の祖父にあたる人で、私は3代目社長。「家業は長男が継ぐものだ」という理由だけで社長になってしまったので、「会社の理念」を意識して考える機会もありませんでした。
20代で親父が死んだ後に社訓というか、社是みたいなものを作りはしたものの、そのままになっていました。企業理念はあるべきだと考えていたので、自分なりに策定して会社の壁に飾っていましたが「誰も理解していないだろう」と密かに悩んでいましたね。自分の中では腹落ちしていても、会社の人間にどう伝えればいいのかわからなかったんです。
さて、どうしていいものかと考えあぐねて、他社に話を聞いていると、ほとんどの企業には理念があることを知りました。また企業理念の策定を手伝ってくれる会社があることも知りました。最終的に依頼することに決めた理念策定・浸透アドバイザーの方と3年計画で二人三脚で着手しようと決意しました。
「新しいことは即拒否」保守的な社員の意識を変える
理念策定のプロジェクトは、私が選んだ社内のメンバー7人に任せました。社長の私が同席すると、会社の人間がすごく忖度すると感じていたので、あえてミーティングには参加しない形で進めました。最初の半年で10回のミーティングを通して言語化を完成させ、次の2年間で自走して理念を浸透できる組織を作るというスケジュールです。
しかし、実際にプロジェクトを始めると大変でした。会社で支店長をしていた20代後半の若手社員は、第1回ミーティングで開口一番「こんなことやって、意味あるんですか?」と。何十年も同じスタイルで経営を続けてきた会社なので、何かを新しく変えることに社員が否定的なんですね。まずはその意識をどう変えるかが高い壁でした。
他にも、プロジェクトの途中でさまざまな壁が出現しましたが、そのたびに理念策定・浸透アドバイザーの方に個別に相談に乗ってもらい、二人で対応策を考えました。
創業70数年を経て改めて言葉にした会社の社会的使命(ミッション)。それを社員にもお客様にも覚えていただきやすいように「明日を明るく。Lighting Tomorrow」という平易な言葉で表現。
会社の使命(ミッション)に加えて、経理理念と経営方針も社員の皆様が力を合わせて刷新。「次の時代」を社員みんなで作っていこうと、社内で気持ちを一つに。
3年かけて「社員が自分で未来を考える」社風に
こうして理念策定・浸透アドバイザーの方に伴走してもらって3年が過ぎました。理念の浸透や、社員の意識の変化は、やはり一朝一夕にはいかず時間がかかります。でも、変化は出てきているな、と実感しています。
例えば、社員の間から「今日、未来会議なんです」という言葉を聞くようになりました。「未来会議」とは、企業理念の策定・浸透プロジェクトの社内での名称です。私が直接的に関与せず任せきっても、社員が自分たちで継続的にしてくれているのが嬉しいですね。
差別化が難しい業界だからこそ、「当たり前」を大切に
電気製品の卸売は、競合他社との差別化が難しい業界です。なので、「社員がとにかく元気」とか、「会社に活気が溢れている」とか、至極当たり前のことを当たり前に実現できる会社を目指したいんです。逆に言うと、業界全体でそれができている会社が少ないので、実行にさえ移せれば勝てるかな、と。
保守的な業界にあっても、社員みんなが未来に希望を持って働き続けられるよう策定した、スピリット(毎日の仕事で大切にしたいこと)。職場に貼れて、見るたびに気持ちが明るくなるポスター版に。
とはいえ、不安しかないですよ(笑)。この歳になっても悩むのか、と思います。それでも「うまく経営していかないとな」と自分を奮い立たせています。
ひと昔前までは安定産業で「子どもが継ぐもんだよ」と思っていましたが、今はそういう時代じゃないですよね。うちは田舎の中小企業ですから、誰かに継いでもらうことより、M&Aを考えるべきかもしないですし。
実は社内に「この人に継いでほしいな」という人はいるのですが、特に伝えてはいません。私には娘しかいないのですが、選択肢として娘に継いでもらうことも想定はしています。
でも、結局「経営はセンス」でしかないと思うんです。
誰が私のあとを継ぐにしても、その人が経営のセンスを磨いて、責任を持てるところまで成長するしかないので、現時点で見極めるのは正直難しい。最終的には、うちの会社で働いている人たちが充実して仕事ができる環境を作れる人が、会社を継ぐべきなのかな、と。誰が4代目になるかはわかりませんが、理念策定にしても、新規事業にしても、未来に繋がるものを今から着実にやっていきたいと考えています。
「企業理念ラボ」には、
企業理念の言語化や浸透策の
事例が豊富にございます。
ご関心のある方は
お気軽にお問い合わせください。
株式会社ミツヤマ電気
光山 敬一さん
29歳の若さで株式会社ミツヤマ電気の3代目社長に就任。「この街で事業を継続してきたからこそ、地元の発展に貢献したい」と電気製品へと商材を絞り、九州唯一の照明器具のショールームを開設。近年は福岡のみならず、沖縄、東京、四国へ事業エリアを広げている。
会社情報
- 社名
- 株式会社ミツヤマ電気
- 代表者
- 代表取締役社長 光山 敬一
- 本社所在地
- 福岡県福岡市博多区須崎町6-3
- 従業員数
- 40人(グループ2022年時点)
- 創業
- 1946年4月
- 事業内容
- 照明器具、盤・キュービクル、空調・換気、オール電化設備・家電など、電材商品の販売・設計・施工