INTERVIEW

愚直に技と心を磨いて海外に進出
日本のものづくりを守る町工場の奮闘

興味のあるトピックが一つでもあれば、この記事がお役に立てるかもしれません。

  • 24歳から代表を務めてきた父の後を継ぎ、32歳で社長に就任
  • 取引先のイギリスの拠点に出向し、現在はタイに進出
  • 会社の真髄を表現した「心技鍛錬」を永久指針に掲げる
  • 経営理念は幹部、行動規範は若手リーダーと共に作った
  • 教育とネットワークで日本のものづくりを未来につなげる

愛知県名古屋市に本社を構える株式会社TEKNIA(テクニア)は、創業から114年の歴史を紡いできた金属加工メーカーです。航空機や自動車、半導体製造装置、医療機器などの精密部品を国内外4拠点で製造。一方で、社内外に技能を伝承する「TEKNIA College(テクニアカレッジ)」を運営し、同業他社と協業するネットワークも構築、日本のものづくりを未来へとつなげるためにリーダーシップを発揮しています。4代目社長の高橋弘茂さんに、会社の沿革やものづくりへの熱い思いを伺いました。

(聞き手:企業理念ラボ代表 古谷繁明)

24歳から代表を務めてきた父の後を継ぎ、32歳で社長に就任

―まず御社の創業からの歴史について教えてください。

 

弊社は1912年、私の曾祖父が名古屋で創業しました。曽祖父はもともと東京にいて、天皇家が保養所で乗る御陵馬車の部品を作る職人でした。その技術をもとに、自転車の部品を作るために名古屋に移住して「高橋鉄工所」を立ち上げたと聞いています。戦時下には軍事工場になった後、2代目だった祖父の死去に伴い、1965年に父が24歳で代表に就任。それから2001年に私が代表になりました。

 

 

―高橋さんは何歳のときに継がれたのですか?

 

32歳です。父が60歳で交代しました。交代後、父はほぼ会社に来ることもなく任せてくれて、今はタイに住んでいます。そして、息子がタイの工場の代表をしています。

 

―事業承継がなかなかスムーズにいかず苦労されるケースが多い中で、早くにバトンを渡されたことに驚きました。なぜうまくいっているのでしょうか。

 

どうでしょう…社長を交代した夜、父は「最大で最高の決断をした」と言ってくれました。父は24歳から37年にわたり会社を牽引し、すごく一生懸命で仕事に実直な人だったので、さっぱりしたかったのかもしれません。

取引先のイギリスの拠点に出向し、現在はタイに進出

―もう安心して息子に任せられると思われたのでしょうね。高橋さんは会社を継ぎたいと思われていましたか?

 

ずいぶん前から社長になることを目標に、経営の勉強会などに参加していました。父の姿を見て育ち、憧れもありましたね。

 

 

―高橋さんは新卒で入社されたのでしょうか。

 

そうです。私が高校生の頃、会社に機械を動かすコンピューターが入って、それが面白くて触っていたんですよ。一方で、バンド活動を頑張ってセミプロのようになり、大学に行ったら東京でプロになろうと思っていました。ところがある日、東京から名古屋にすごいバンドが来て、とても上手でかっこいいのに「10年やっても芽が出ない」と…これは自分たちがプロになるのは無理だとあっさり諦めました。

当時、弊社は10人ほどの会社で、機械を動かすプログラマーが一人しかいなくて。私は楽しくてしょうがなくてアルバイトをしていたら、いつの間にか社員になっていた感じです(笑)。ものづくりは楽しいですね。

 

―入社後はどんなキャリアを歩まれたのですか?

 

父から外で修業してこいと言われて、26歳から3年間、イギリスのヤマザキマザックに出向させてもらいました。ヤマザキマザックは日本を代表する工作機械メーカーで、世界各地に生産拠点を持っていて、うちの取引先でした。

 

―お父様が信頼されていたから受け入れてもらえたのでしょうね。

 

とてもありがたかったですね。帰国後は営業の仕事が楽しくて、3年後に社長になりました。当時は社員30人ほど、2つ目の工場が完成したところでした。

 

―気の早い話ですが、息子さんに継がれるつもりですか?

 

息子は5代目になるために一生懸命に勉強しているところです。彼はアメリカの大学を卒業して海外が肌に合っているようで、今はタイの工場をみています。最初の資金はこちらから出しましたが、その後は借り入れせずにしっかり回しているので立派だと思います。

 

―タイに進出されたきっかけを教えてください。

 

父はゴルフが好きで、引退後に数か月タイに行ってゴルフをしていました。そこでできた人脈をもとに、2004年に事業を始めました。

 

―タイの工場では何をされているのですか?

 

日本と同じ切削加工で、タイのお客様から受注した製品を作っています。日本から頼むことはなく、タイ国内で営業していただく仕事で成り立っています。

会社の真髄を表現した「心技鍛錬」を永久指針に掲げる

―理念についてお伺いします。永久指針として掲げられている「心技鍛錬」という言葉はいつ、どうやって決められたのですか?

 

会社には理念が必要だと勉強してきたので、社長になったら理念を作ろうと思っていました。難しい言葉を並べるのではなく、まずは社員に覚えてもらいたくて、「心技鍛錬」という短い四字熟語にしたのです。脈々と受け継がれてきた会社の雰囲気のようなものを表現したくて、ひとりで考えました。ものづくりの技と心、その両方を鍛錬することで社員は成長できると考えています。

 

 

―先代から受け継いだ一番のポイントは何でしょうか?

愚直さで、それを表しているのが心です。

 

―まっすぐ愚直に技術を磨いていらっしゃると。

今でも技術力が高い会社というイメージをお客様に持っていただけているのは、先代から受け継いだ財産だと思います。

 

―永久指針はどのように活用されていますか?

毎日、朝礼のときにみんなで「心技鍛錬」と唱和しています。弊社は職人が8割ほどで、日々仕事を通して技を磨いているので、なじんでいると思います。タイ工場の人も覚えていますよ。

経営理念は幹部、行動規範は若手リーダーと共に作った

―経営理念と行動規範も定められています。いつ、どうやって決められたのでしょうか。

 

どちらも2007年に作りました。経営理念は、父の代から働かれていた50代の専務と常務と一緒に1泊で考えました。

 

 

一方の行動規範は、若手のリーダー5人と考えました。これからTEKNIAを大きくするのは、私1人ではできず、社員と力を合わせていかなければと思ったので。自分たちがどんな規律のもとに仕事をしていくかを出してもらい、リーダーたちの言葉をそのまま使っています。

「素直でいよう」「楽しくいこう」「誇りを持とう」「豊かな発想で日々実践しよう」「約束を守ろう」「期待に応えよう」「最後まで諦めずに希望を叶えよう」の7項目で、この思いを胸に日々仕事に向き合っています。

 

―若手と一緒に作ってみて、いかがでしたか?

 

自分たちで作った言葉なので、思い入れが強いように感じます。経営理念と行動規範も朝礼で唱和していますが、風化しないんですよ。私はことあるごとに「TEKNIAは何のためにある会社か」「お客様の高い要求にお応えしているか」と現場で問いかけるようにしています。今のナンバー2、ナンバー3も企業理念を大事にしていて、僕と同じように言ってくれることで、社員たちにも浸透しています。

 

―会社は順調に成長されているようですが、うまくいかなかった時期もあるのでしょうか。

 

日本の市場はシュリンクすることが見えているので、アメリカへ営業に行ったり、タイで会計をサポートする会社は立ち上げたりしましたが、うまくいきませんでした。ただ、そのときに広がった人の縁や経験から仕事の幅が広がった側面もあります。

教育とネットワークで日本のものづくりを未来につなげる

―経営者としての信念や志について教えてください。

 

愚直に技術を磨き、工夫を重ね、お客様を大事にするものづくりをすることです。TEKNIAのものづくりは品質ありきで、価格競争には負けてしまうこともあります。一切妥協せず手を抜かず、ものづくりに真摯に向き合う精神が社員一人ひとりに受け継がれています。

技術を誇る弊社には、技術者をランクづけした番付表があります。相撲の番付表をマネしたものです。外国人の社員もいますし、給料を上げてほしいという話になれば、ここまで技術を上げればいいと明確に示すことができます。みんな横綱を目指してほしいと思っています。

 

 

―日本の製造業を守るための取り組みもされているそうですね。

 

はい、大きく2つの取り組みがあります。ひとつは2006年から「TEKNIA College(テクニアカレッジ)」という社内教育・研修機関を運営しています。ものづくりの技術や技能を伝承していくために、社員が先生となってスタートしました。外部の製造業者や工業高校の生徒なども幅広く受け入れていて、テレビで放送されたため北海道や広島など遠方から受けに来られることもあります。社員は教えることで相手に喜ばれ感謝されて、社員自身の成長にもつながっています。技能は短期間では身につきませんが、基礎を覚えて「楽しい!」と思ってもらうことで、探究心に火をつけるのが弊社の使命だと考えています。

 

 

―素晴らしいですね。もうひとつはどんなことでしょう。

 

日本の町工場は高い技術を持っていても、価格競争の波にのまれ、つながりや営業力がないことで仕事を受注できず、廃業に追い込まれている現状があります。そんな社会課題を解決すべく、2年ほど前に「TEKNIA NET WORK(テクニアネットワーク)」を立ち上げました。弊社が国内のものづくりの会社をまとめて、営業を代行して仕事を受注し、適切な工場に振り分ける仕組みを作りました。同業他社と協業して、新たな受注を増やしていきたいと考えています。技術に不安がある会社には、弊社の熟練技術者を派遣してスキルアップもサポートしています。

 

―近隣の会社とネットワークを作られているのでしょうか。

 

現在は100社ほど、東海エリアを中心に宮崎や広島、山形の会社も登録されています。弊社の営業力を高めて、1000社まで仲間を増やしていきたいと思っています。

私はアメリカをはじめいろいろな国を見てきて、日本のものづくりは設計からレベルが段違いであると実感しています。ものづくりに込められている思いが非常に強く、信頼性も高い。日本のものづくりが必要とされる分野は必ずあるので、日本の企業や技術が後世まで残るように貢献したい。日本の製造業を守り、グローバル化に負けないものづくりを未来につなげていきたいです。

 

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株式会社TEKNIA 

高橋 弘茂さん

1969年愛知県生まれ。1989年に高橋兄弟鉄工所(現・TEKNIA)に入社して現場経験を積み、「Yamazaki Mazak UK」への出向などを経て、2001年社長に就任。

会社情報

社名
株式会社TEKNIA
代表者
代表取締役 高橋 弘茂さん
本社所在地
愛知県名古屋市中川区江松三丁目459番地
従業員数
150名(グループ含む)
創業
1912年
事業内容
自動車部品、航空機部品、工作機械部品、電機・電子部品等の試作・量産
会社サイト
https://teknia.co.jp/
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