世の中には多くの企業がありますが、9割以上は中小企業です。
中には昔ながらの家族経営の企業も多く、企業理念がきちんと定まっていない企業も少なくありません。
しかし企業理念がないと、次世代に自分たちの思いを伝えていくことはできません。
時代を超えて会社が成長していくためには、組織に合った理念を確立する必要があります。
今回は、社員を主体とした企業理念の策定を行った株式会社ミツヤマ電気の光山敬一氏にお話を伺いました。
目次
- 1 今回お話を伺ったのはこの方
- 2 企業理念を策定しようと思い立った背景
- 3 Q.企業理念を策定するに至ったきっかけはありますか?
- 4 Q.弊社の古谷と出会ったときの思いを教えてください。
- 5 理念策定に否定的なメンバーが「未来会議」を定期的に開くほどに変化
- 6 Q.プロジェクトはどのように進められましたか?
- 7 Q.3回のインタビューで変化はありましたか?
- 8 Q.3年を経てようやく変化が見られたとなると、もどかしい思いはありますか?
- 9 柔軟な発想を持ちながら事業拡大を目指していく
- 10 Q.次はどのようなことにチャレンジしたいですか?
- 11 Q.これからのビジョンをお聞かせください。
- 12 Q.事業は今後誰に継承していくお考えでしょうか。
- 13 理念策定に悩む方へメッセージ
今回お話を伺ったのはこの方
ミツヤマ電気 社長 光山 敬一 氏

29歳の若さで 株式会社ミツヤマ電気の3代目社長に就任。
「この街で事業を継続してきたからこそ、地元の発展に貢献したい」と電気製品へと商材を絞り、九州唯一の照明器具のショールームを開設。
近年は福岡のみならず、沖縄、東京、四国へ事業エリアを広げている。
企業理念を策定しようと思い立った背景
懇親会にてゲストトーク中の光山社長
Q.企業理念を策定するに至ったきっかけはありますか?
電気製品の卸売りというのは昔ながらの商売というのもあって、離職率が高いのが特徴的です。
会社の覇気もなく、業界自体に元気がありません。
つまり若い世代がやりがいを感じる業界ではなく、このままだと将来性はないため、次の世代に繋げるためにも理念が大切だと考えていました。
そもそも私がミツヤマ電気を創業したわけでもなく、昔ながらの長男は家業を継ぐものだという理由だけで社長になったため、理念という考え自体ありませんでした。
20代で親父が死んだ後に社訓というか社是みたいなものは作りましたが、それ以前は全くありませんでしたね。
悩みを持ちつつ他社に話を聞いていると、ほとんどの企業は理念があることを知りました。
他社の状況を聞いて、さらに企業理念を策定したいという思いが増してきました。
プロジェクトを通して作成したクレドポスター
Q.弊社の古谷と出会ったときの思いを教えてください。
古谷社長にお会いして、私は企業理念の策定を手助けしてくれる会社があることを初めて知りました。
企業理念は基本的にあるべきだと考えていて、自分なりに策定して会社の壁に飾っていましたが「誰も理解していないだろう」と悩んでいましたね。
自分の中では企業理念を消化できていたのですが、会社の人間にどう伝えるのかが分からなかったので、古谷さんにお願いした経緯があります。
理念策定に否定的なメンバーが「未来会議」を定期的に開くほどに変化

Q.プロジェクトはどのように進められましたか?
選んだ7人のメンバーに策定を任せました。
私にはときどきインタビューをしてもらう形で話を聞いてもらい、メンバーがまとめながら進めるスタイルにしました。
会社の人間も社長の私に忖度していることを凄く感じたため、あえてミーティングには参加しないスタイルを取っています。
実際にプロジェクトを始めると大変でした。
会社で支店長をしていた20代後半の若手社員も参加したのですが、第1回ミーティングの彼の一言目が「このようなことやる意味あるんですか?」でした。
良くも悪くも昔からやっている会社で、社員も否定的なんですね。
新しいものは全て拒否というスタンスのため、意識をどう変えるのかが大きな壁でした。
社員が抱えている壁を破る方法は、古谷さんに相談に乗ってもらっています。
古谷さんは毎回ミーティングに参加されて、私は3回くらいはインタビューしてもらったりしましたが、その後はほとんど参加しませんでした。
Q.3回のインタビューで変化はありましたか?
当時は正直、変化はあまり感じませんでした。
コンサルを古谷さんに実施いただいて4年目ですが、今ようやく変化が出てきたように思います。
今私の知らない所で「今日、未来会議なんです」というのを聞くようになりました。
未来会議というネーミングで企業理念のプロジェクトを進めていたのですが「今でもやっているんだな」と思って少し嬉しかったですね。
一応、継続してくれているようです。
私が任せるよと社員に言い続けて理念を考える機会になったことは、彼ら自身にとってプラスになったのではないかと思います。
Q.3年を経てようやく変化が見られたとなると、もどかしい思いはありますか?
そうですね、今でももどかしさを感じます。
我々の事業は日々の商売で毎日の売上がリアルに表れるもので、未来会議を開催したとしても売上に直結しないというジレンマはあります。
本当に会社にとっていいことができているかという疑問は今でもありますよ。
ただその未来会議を実施していることが、間違いじゃなかったというのをこれから証明したいですね。
企業理念の策定をしなければさらに酷いことになっていたのかなと思います。
また企業理念を策定しなければ、次のステップに進めないんじゃないかなという不安は常々ありますね。

柔軟な発想を持ちながら事業拡大を目指していく

Q.次はどのようなことにチャレンジしたいですか?
基幹事業としてはBtoBの卸業ですが、私たちより数十倍規模が大きい会社さんもあって、そのような会社と戦うのは難しいですよね。
新規事業として、今の自分たちの事業から派生できるものを提案していきたいと考えています。
私が社長に就任するまでは、福岡で「ミツヤマ電気商会」として営業していました。
他で事業をするという発想はありませんでしたが、私が引き継いだ時にノリで沖縄に進出しています。
当時は怖い者知らずだったので、沖縄楽しいよなという発想で会社の人間を1人行かせました。
色々あってそれから16年、ずっと沖縄で頑張ってくれた人を社長にして、沖縄ミツヤマ電気という名前で法人化しています。
私は、沖縄に遊びに行くために用事を作って行っています。(笑)
そういう発想は私しかできませんよね、社員はそのようなことなかなか言えませんから。
そういうノリは今でも持っていて、不安はありますがやってみたいという思いとのせめぎ合いになっていますね。
照明器具に携わっており、“ライトアップ”を私たちの事業のテーマの一つとして位置づけています。
ボランティアではありますが「博多ライトアップウォーク」という事業をしています。
現在は何万人と集まるイベントになっているため、それを事業化できないかと考え中です。
イベントは今抑え気味の状態ですが、これから盛り返す流れもあって東京では富岡八幡宮と連携してライトアップイベントを進めています。
さらに東京の深川地区で、障がい者のアートを地区全体でやろうというイベントのライトアップも担当しています。
事業というよりはボランティアですが、まずは名前を売るために携わっていますね。
Q.これからのビジョンをお聞かせください。
業界的にも特別な業界ではなく、他と違うことを探すには難しいものがあります。
技術力では他と差をつけるのは難しいため、元気があるなど至極当たり前のことを当たり前にできる会社を目指したいです。
逆に言うとそれができていない業界でもあるため、当たり前のことを実行に移せれば他の企業にも勝てるかなと考えています。
とは言っても、不安しかありませんよ。(笑)
この歳になってここまで悩むのかと思うぐらいです。
ですがその中でもうまく経営していかないとなと、自分を奮い立たせています。
1つ言えるのは、沖縄を含めメンバーに会社を任せるときに、約束してほしいと言っていることがあります。
それは「会社としてバックアップはするけど、あなたの仕事は次のあなたを見つけて会社を引き継いでもらうこと」というミッションです。
ミッションを課している理由は、次の世代に繋がるような考え方を持った方と一緒に仕事をしたいと思っているためです。
私が三代目っていうのもあるのかもしれませんが、世代が繋がっていくことこそ重要なのだと思います。
どのような形でも構いません。
私が関わらなくても、社員たちが違う形で繋いでいけば良いと思いますね。
Q.事業は今後誰に継承していくお考えでしょうか。
今までは子どもに家業を継いできたのですが、私の場合は娘しかいません。
選択肢の一つとして、娘に継いでもらうという考えはあります。
しかしあえて決めつけずに、会社の中で継いでくれればなという思いです。
社内でも継いでほしいなと考えている人はいますが、特に伝えてはいません。
私は、経営はセンスしかないと思っています。
これから先その人がどうセンスを磨くかと、そこまでの責任を感じられる人に成長できるかしかないと思うので、実際それらを見極めるのは今の時点では難しいなと思いますね。
また田舎の中小企業なため、会社を継いでほしいというよりはM&Aも考えるべきかなとも思います。
ひと昔前までは安定産業で、子どもが継ぐもんだよと思っていましたが、今はそのような時代でもありません。
会社で働いている人たちが充実して仕事ができる環境を作れる人が、会社を継いでいくべきなのかなと思います。
理念策定に悩む方へメッセージ

私は20代から企業理念の策定に取り組んでいましたが、なかなか浸透できませんでした。
社員が主体的に考えることで、より良い企業理念の策定ができたと思っています。
これからもエンカレッジさんに協力してもらいつつ、新規事業拡大なども行っていきたいと思います。
〈会社概要〉
- 社名:株式会社 ミツヤマ電気
- 代表取締役:光山 敬一
- 従業員数:32人 ※2019年度時点
- 事業内容:照明器具、盤・キュービクル、空調・換気、オール電化設備・家電など、電材商品の販売・設計・施工
企業理念の言語化と浸透にお困りの方は、「お問い合わせ」よりご相談ください。
企業理念ラボを主宰するエンカレッジ株式会社は、自走できる組織作り、モチベーションアップ、組織価値の再発見、次世代リーダーの育成などにつながるサポートを行っています。