ブランディングで“子ども主体”の幼稚園・保育園を教職員とともにつくる/学校法人浅利教育学園

理念を掲げ、同じビジョンを共有することは組織にとって欠かせません。

それは、幼稚園・保育園のような業種でも同じことです。

決まった答えのない教育業界だからこそ、自分たちの提供するサービス・教育が「本当にこれでいいのか?」と迷うことも少なくありません。

教職員がすべきことを理解するためには、ありたい姿や目指したい教育を言語化し、理念として共通認識を持つ必要があります。

それは保護者の共感を呼び、中心にいる子どもたちにも好影響を及ぼします。

今回は複数の園が「子ども主体」という同じ教育方針を掲げるために理念の策定を行った、学校法人浅利教育学園・浅利健自氏にお話を伺いました。

目次

今日お話を伺うのはこの方

学校法人浅利教育学園・浅利 健自 氏

北海道で幼稚園・保育園を経営。4年前、かつて理事長を務めていた父の逝去にともない新たに理事長として就任。

その後、待機児童の増加を背景に施設数を倍近くまで拡大した。

法人のブランディングを依頼した背景

きっかけは、エンカレッジの担当・古谷さんと出会ったことです。

知り合った場所は、ベトナムへのビジネスツアーですね。
私の周辺の幼稚園経営者でベトナムに知り合いがいる方がいて、現地を訪れることになりました。

仲間内の10人くらいで行き、その中にたまたまいらしたんです。
4〜5日一緒にいたので、日夜コミュニケーションを取るうちに打ち解けました。

当時はブランディングのことは何も知らず、まだ父も健在で自分が経営者の立場ではなかったこともあり、まさか自分の法人に縁があるとは全く思っていませんでした。

Q.依頼前に抱えていた課題はありますか?

父から理事長を引き継いで以降、課題がとても多いと感じました。

中でも最大の課題は、各園が独自の教育方針で運営していたことです。
法人ごと、園ごとにカラーがすべて異なった状態で1つの組織になっていました。

個性的でよいと捉えることもできますが、各園の経営者によって教育の質にムラがあることが気になっていました。
経営者である各園長の得手・不得手や、能力の有無が大きく影響していましたね。

改善のためには教育方針や理念に注目する必要がありましたが、依頼前はまだそこにコミットしていく考えはありませんでした。

Q.課題を解決しようと自社で改革を行ったと伺いました。具体的にどのようなことをなさったのでしょうか?

まずは教育・保育内容の改革です。

それまで大人が主導してきた“teach”ではなく、これからの時代は子どもたちが自分たちの好奇心をもとに、主体的であるべきだと考えました。

“teaching”から“learning”へ。

一部の園長には東京都内の先進的な園を見学させたり、遠方の研修会へ積極的に参加させたりしました。

最先端の研究や実践を参考に、私たちなりの教育改革を進めていこうとしたのです。

Q.この間に、勉強やインプットに費やされた期間はどのくらいですか?

期間は半年〜1年程度です。教育施設ですので、正解がありません。
今もずっと勉強中です。

私たちの仕事はゴールがなく、平準化も難しい部分もあります。

当時は私が自ら企画して、行きたい園や会いたい先生、参加すべき研修場所を見つけ、園長たちを帯同していました。
これらの経験は私にとっても、先生たちにとっても大きく響きました。
「この道しかない」とみんなで思えたことが印象的でした。

「自分たちの教育・保育とはなんだったんだろう?」と振り返る期間となり、園長含めた幹部職員のマインドが変わりました。
視察や学習をきっかけにムードが一変したのを覚えています。

Q.課題解決に取り組む過程で、最終的にエンカレッジに依頼しようと思ったポイントはありますか?

それまで私は、ブランディングとは無縁の人間でした。
教育業界にいる大多数は、そうした概念には関心がないものです。

「信念に基づいてやることやっていりゃいい」と。
私もかつてはその一人でした。

けれども「前面に出してわかりやすく伝えよう」「プロモーションをしてみよう、形にしよう」と考えて実行するブランディングには、非常に大きな威力があるのではないかと感じ始めたのです。
今までは、我々が何を目標としているのか、教職員に伝える手段がありませんでした。

今まさに改革を成し遂げようとしている段階で、理念を言語化したい。
そうした折に古谷さんと出会えたことが、1番の決め手でした。

バラバラだった教育を1つの理念をもとに変革させること、そして教員主体から子ども主体にすること。
この2つはまさにドラスティックな変化といえます。
何十年に1度しかないような大きな改革に挑むことは、私にとってもよいチャンスだったのです。

教育方針「あ!そう!ぼっ!」の策定で職員のモチベーションがアップし、保護者にも好影響


(引用:浅利教育学園グループ「教育方針」)

Q.プロジェクトを進めていく中で、サービスの感想や社内の変化について教えてください。

感想は、「期待以上」です。
予想していた以上に素晴らしいものができました。

子どもを主体とした遊びの保育を「あ!そう!ぼっ!」というコンセプトで表現したのですが、誰にでもわかりやすく、かつ“私たちが取り組もうとしている教育の理念”にマッチしたブランディングをしていただけたと感じています。

やはり、教職員と理念の共有ができたことは大きな達成です。
今までは理念がない中で「それぞれの園の特色を出してほしい」と伝えていたため、常に教員には「これでいいんだろうか」「どういう教育・保育をしたらいいんだろう?」という迷いがありました。

「あ!そう!ぼっ!」という理念が生まれたことで、教職員が迷うことなく業務に取り組めるようになった手応えがあります。
教職員たちも「子ども主体の教育」にシンパシーを感じてくれて、モチベーションが高まりました。

元々、現場にいる教員は「子どもの興味・関心を引き出したい」と思って働いています。
そのためプロジェクトを進めていく中で、特に若手〜中堅教員の目の色が変わりましたね。

「もっとこんなことをやってみたい」「子どもたちに話し合いをさせたら、こんな活動が始まった」など、いろいろな嬉しい声が上がっています。
「子ども主体」を掲げながらも教員のほうが主体的になり、意欲が芽生えてきたのは意外でした。

最初に話したように、ブランディングの“ブ”の字も知らない人間が、手間ひまをかけた結果は予想以上です。
理念を明確化することには、すごいパワーがあるなと。

保護者に対しても喜ばしい影響がありました。
理念を知って「この園に入れたい」と訪れる方が増えたのです。

Q.それまでは、どのような理由で保護者から選ばれていたのでしょうか?

近いから、雰囲気が良さそうだから、兄弟が通っていたから……などですね。

とても曖昧なもので、「何となく来ている」様子があったことは否めません。
待機児童の多い環境下で、「どこかに入園できるならいいか」といった、消極的な選択が多かったように思います。

今では「この理念に共感するので子どもたちをぜひ入れたい」と、前向きに選んでいただける機会がとても増えました。
経営にも大きなインパクトがあり、ブランディングの貢献力を実感しています。

Q.教育業界の職員は、献身的なイメージがあります。彼らの特性をよい意味で活かせられたのですね。

今まで噛み合っていなかった歯車が回転し始めた感じがします。

私の責任なのですが、方向性をしっかり示すことから逃げていたのが1つの問題だったと思うんですね。
ブランディングが私たちの法人に上手くマッチして、目に見えて成果が出ています。

「あ!そう!ぼっ!」の策定により園のコンセプトが学生や保護者に伝わりやすくなったことを実感

Q.ブランディングに携わった教員に変化はありましたか?

携わってくれた教員は、プロジェクトの最中から「自分たちがこの法人の理念を形にするんだ」と高い志を持って臨んでくれました。
ブランディングを通じて教職員も成長したと感じます。

プロジェクトでの学びを現場でフィードバックしていく流れもよかったですね。
関わった教員がインフルエンサーとなり、前向きな姿勢でそれぞれの園に貢献してくれました。

Q.「あ!そう!ぼっ!」はどのようにしてできたのでしょうか?

エンカレッジのプロデュースの下、職員が主体となって当学園の理念をひも解き、最終段階はコピーライターの方の力を借りてこの言葉を作りました。

「あ」は子どもたちが「あ!」と声を上げるような気づき、「そう」は「そうそう、それいいよね!」と後押しする大人たち。
「ぼっ」は「明日続きをやってみよう」「もっと調べてみよう」と没頭して夢中になることを表しています。

自由で主体的であることと、放任することは違うと考えています。
私は日頃から「対話的で深い学び」という言葉を使いますが、教員が子どもにきっかけを与えて好奇心に火をつける「あ!そう!ぼっ!」サイクルは、その対話のサイクルを上手く回していけるような教育を目指しています。

Q.理念の「あ!そう!ぼっ!」は、園児を募集するときや、教員の採用時にも全面的に活用なさっているのでしょうか?

園児の募集は、もはやこれなしには考えられません。

「ここは遊びを大切にしている園」と認知され、周知が広まっているのを感じます。
同じ意識の園は沢山あると思いますが、ブランディングによってわかりやすく伝えられているかどうかは重要です。

伝え方や伝えるツール、わかりやすさは大事。
ブランディングを通じて皆が同じ考えを持っているだけで、効果が全然違うと感じます。

採用する人数自体はそこまで変わっていませんが、学生の質に変化が見られます。
最近は、学校でしっかりと学んできた学生に選ばれるようになりました。
彼らは意欲も高いので入った後も成長します。

ここ2年くらいで、将来のリーダーとなりうる人材が増えてきた印象です。
今後の法人の発展には、間違いなくそのような人材が必要です。
逆に、意欲のない学生は「あの園に行ったら大変そうだから」と敬遠するようになりましたね。

今後さらに少子化が進めば、他園との競争はさらに激しさを増すでしょう。
その環境下で優秀な人材は宝ですし、お客様である保護者に対してしっかりPRできるかも重要です。

私たちは、ブランディングを通してこれらの武器を与えていただきました。
感謝でいっぱいです。

Q.新たな理念が生まれる過程で、印象的だったエピソードはありますか?

やはり、教職員のモチベーションアップが最も印象に残っています。

ミーティングに参加してもらった教員からお礼を言われるくらい、かけがえのない体験だと捉えてくれていました。
プロジェクトはコロナ禍の直前に始まったのですが、コロナ明けを見据えてロケットスタートを切ろうとする上で、最適なタイミングだったと言えます。

Q.浅利様ご自身にも大きな変化があったように感じますが、いかがでしょうか?

確かに、そうかもしれませんね。

仕事の仕方も大きく変わって、私がグリップして強くコミットしていかないと、それぞれの園が成り立たないことを再認識しました。
プロジェクトの最中でも、私の仕事は沢山ありましたね。

教職員を信じて任せられるようになったことも大きいと思います。
今までそう思えなかったのは、私自身が理念を伝えてこなかったために、迷わせていたことが実態ではないかと感じます。

今では大きな信頼を寄せているため、「あの施設がやっているなら間違いない」「他の園とも共有してみよう」と思えるのです。

今では現場のチェックをするのではなく、いいところを共有していこうとする姿勢に変化しました。
前向きな経営視点の持ち方になりましたね。

それまで私は周りの人に経営の話しかせず、理念やビジョンについては言葉にしてきませんでした。
理念やビジョンに向き合っていない自分が恥ずかしい、と思っていたのかもしれません。
自信を持って話せるようになったことも、変わった部分の一つです。

ブランディングに悩む方へメッセージ

私たちは、教育・保育改革にスピード感を持って取り組んできました。
ブランディングを通して、教職員・保護者・学生と理念を共有でき、さまざまな方面への好影響を実感しています。

何よりも実践してよかったと思うことは、その中心にいる子どもたちが「幼稚園・保育園に来るのが楽しくなった」ことです。
「もっと遊びたい」「先生にこんなこと聞いてみたい」と、いきいきと活動するようになってくれたことが最大の成果だと思います。

それが私たちの最大の使命、「子どもたちのために周りの大人たちは何ができるか」。
よい結果を出せていることを、エンカレッジの方に改めて感謝いたします。

教育業界はアナログな面も多く、広報やブランディングに距離を置いている経営者も多いのではないでしょうか。
しかし、我々ほどマッチする業界はないと思います。

モノを売る仕事ではない以上、理念を共有することが何よりも大切ですから。

〈法人概要〉

  • 法人名:学校法人浅利教育学園
  • 理事長:浅利 健自
  • 事業内容:認定こども園・保育園の運営、一時保育・障がい児保育

「企業理念ラボ」を主宰するエンカレッジは、「企業理念・経営理念を分かりやすくまとめて企業のブランディングを支援する」事業を展開しています。

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